国際情勢の分析方法について

本稿は、国際政治情勢等分析上、これは役に立ちそうだと思うノウハウ情報を再編集したもの。





■情報源としては、秘密情報よりも公開情報を優先

馬淵睦夫、岡崎久彦の見解が参考になる。

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馬淵睦夫が読み解く2019年世界の真実 いま世界の秩序が大変動する

149~150頁
これまで本に書いてきたことも、本書で述べていることも、すべて公開情報を私の世界観でつないでいったものです。国際情勢で何か動きがあったら、必ず裏がある。だから、常に結果から原因を類推すればいいのです。つまり、目の前に出ている結果によって、誰が得するかということから、論理的に考えていけば原因もわかるわけです。
前述したイギリスにおけるスパイ謀殺未遂事件にしてもそうです。一番損したのはプーチンです。一番損する人がやるはずがないと、われわれの常識で判断できるだけです。
秘密情報などというものを無批判に信じてしまうと、デイスインフォメーションに引っかかる危険があります。飛び交っている秘密情報と称するものにからまれると、情勢判断を誤まるのではないかと思います。つまり、秘密情報には真実を隠蔽するための「偽旗作戦」の側面もあることい注意が必要なのです。

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馬淵睦夫は、肝心な箇所、上記でいうと説得力ある分析ノウハウに係わる箇所に、プーチンネタを入れてくる癖がある。だから、ロシアの、、、であろうと疑う人が出てくる。
「前述したイギリスにおけるスパイ謀殺未遂事件にしてもそうです。一番損したのはプーチンです。一番損する人がやるはずがないと、われわれの常識で判断できるだけです。」を除外して読めば、教育テキスト的にすっきりした文章になるように思う。

岡崎久彦はかく指摘する。

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情報・戦略論ノート 岡崎久彦

36頁
偵察衛星とかスパイとか、情報というと皆さんはそういう話ばかりと思われるんですけれども、実はそんなもんじゃないんです。私の感じでは九割以上、公開情報でわかるんです。
とくに戦前は、日本は孤立していたせいもあって、秘密の情報は少ししかなかった。あのころ言われていたのは、イギリスとドイツとフランスの新聞を毎日読んでいれば、国家間の秘密はないということでした。二十年前ぐらいまでのわれわれの先輩はみんなそういうふうに教わって外交をやっていたわけです。
かつてCIAが調査して、アメリカの新聞に出る記事とか議会における公聴会の記録などの公開情報だけ集めて、どれだけ正確にアメリカの軍事力が評価できるかということを確かめたら、ほとんど全部わかるということだったそうです。トルーマンが、アメリカの秘密情報の九五%は新聞その他の刊行物に発表されていると言ったということです。

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スクープネタに依存する傾向が強い、マスコミ記者の分析力のなさを暗示する指摘である。




■分析の主たる目的は、情勢判断

岡崎久彦は、いたずらに分析することが分析の目的ではないとしている。

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情報・戦略論ノート 岡崎久彦

第一章 情勢判断とは何か

政策に先行する情勢判断
24頁
アメリカで「日本の情報は遅れている」などと話しますと「とんでもない、日本のビジネスの情報収集能力にはとてもかなわない」という反応が返っててきます。おそらく本当なのでしょう。でなければあれだけの国際競争の中で勝っていけるはずがない。
むしろ私が言っていることは、政府も特に外交と防衛は、民間で常識となっていることと同じようなことをすべきだということです。相手があるのですから、「これは日本の譲れない立場だ」とか、「日本の国民感情が許さない」と言っても、先鋒に譲れない立場も、国民感情もある、ということを認識して、その上に立って考えてくださいよ、ということを言っているわけです。
情勢判断は必ず政策に先行します。情勢判断がこれしかないと決まった場合は、政策というものは本当はないんです。どうやろうと、どう努力しようと必ず世の中はこうなってしまうと決まったものは、いくらじたばたしてもどうにもならない。

26頁
日本の情勢感覚と歴史的体験
そういう意味で、情勢判断というのは非常に大事なんです。とくに日本ぐらいのサイズの国ですと、日本より大きな国の出方を全部見きわめたうえで政策を実施するということが何よりも大事なはずなんです。
一つは、情報に対する関心が少ない。たとえば二十年も前に聞いた話では、フランスの外務省の幹部の唯一の義務は、朝ーたしか八時と聞きましたー集まって、一時間だけ情勢判断だけをやること、それも日々の懸案から離れた、国際情勢の判断だけをします。それから後は皆それぞれ勝手な仕事をする。それが本省の局長に課せられた唯一の義務だということでした。

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第二次安倍政権が、内閣支持率、そして手堅い選挙戦で議席を維持してきたのは、この情勢判断のスキルがそれまでの政権よりも優れているという見方ができる。




■日本政府の情報収集水準は、大分改善されてきたいる?

いささか信じがたいことだが、岡崎久彦はかく指摘する。スキル的に一定レベル以上の官僚集団が存在すれば、他国よりも見劣りしないという評価にはなるだろう。TPP交渉でアメリカ政府と対峙した能力は評価されるべきこととなる。

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情報・戦略論ノート 岡崎久彦

30頁
他方、戦後の日本がある意味では、他国よりは情報の面でよくなったというのは、一つは、外交官の英語の力が戦前よりだいぶ進歩したからです。


33頁
手の内を明かせぬ情報収集の過程
情報の管理事務というのは五つに分けまして、まずは情報収集です。次が整理、三番目が分析。整理、分析は一緒にしてもいいんですが、四番目が伝達、五番目というにはちょっと性質が違いますが、これに加えて秘密の保全、これで情報事務が完了するわけです。
先まわりして恐縮ですが収集と伝達については、秘密のことが多くてあまりお話しできません。
34頁
情報の収集能力について皆さん好意的に心配してくださいまして、日本にいったい収集能力があるんですか、どこに欠陥があるんですか、どこをどう直したらいいんだろうかというようなことを言ってくれます。はっきり言って、これは申し上げられないんです。
あちこちの国でいろんあことを言っていますけれども、書いてあることはまず嘘だと思って間違いない。

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■最も重要なのは公開情報の読み込み方、分析者としての執務態度

この辺になってくると、専任であることはもちろん仙人レベルの境地に達しないと不可能ということ。
岡崎久彦が言いたいことはそういうことだろう。

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情報・戦略論ノート 岡崎久彦

37~38頁
重要な公開情報の読み
毎年初めにアメリカの国防報告が出ます。大型で二百ページ以上の本ですけれども、一月ごろそれが発表されまうと、その中で日本に関係した部分で、しかも刺激的な部分だけが新聞にどんどん出ます。翌日の国会で、野党の議員先生がその新聞をもとに質問するので私はそれに答えなくてはならない。前の晩にファクシミリで送ってもらって、朝四時に起きまして、八時までに全部読んで線を引いておく。そうすると新聞にいくら刺激的なことが出ていても、それは一部分の引用であって、全体としてはこういうふうに読むべきであるとか、むしろ新聞の間違いであるとか、そういうことが言えるんです。
二年か三年読んでいるとおのずから全体像がわかってきます。新しい戦略や兵器などがスクープされたというようなことがよく新聞に出ますが、そのほとんどはどっかの公開情報にすでにちゃんと出てるんです。総合的に読まないからわからないだけの話です。まず、アイデアが書いてあって、それから予算ができて、それを発表して、発注すると一つの防衛システムができる。それが配備されるまでに三年や四年かかりますから、配備される少し前になると機密の漏洩という形でどんどん出てくるんですけれども、公開文書を読んでますと、それが大体二、三年前にわかります。だから公開情報というのは何よりも大事なんです。

岡崎久彦の情報戦略のすべて PHP研究所 2002

51頁
文化革命を予言し、ソ連のチェコ侵入を予言したヴィクター・ゾルザは、決して秘密の情報は読まず、共産圏の公開情報を一日に九時間読んでいました。ですから旅行をすると失われた時間を取り戻すのが大変だと言ってほとんど旅行もせず、また、今までに本を一冊も書いていません。むしろ、専門家に本を書く時間があるはずがないと、本を書く人を軽蔑する風がありました。
一度私は、日本から誰かを弟子入りさせることを考えて、ゾルザ氏の意向を訊いてみたことがありましたが、彼の注文は、英露両語を完全に解し、コンピュータを使用できる人で、かつ出世しない人ということでした。何故だと訊いたらば、外交官は偉くなるとコクテールとデイナーに行くから情報を読むヒマがなくなる。だから折角自分の技術を授けても無駄だとのことで、さすが名人、上手というものの、その考え方の徹底しているのに改めて感心しました。

60頁
情報分析の責任者は保守主義者でなければなりません。世の中変わったとか、もう二十世紀であって十九世紀ではないとかいうことで浮かれないことです。ソ連のチェコ侵入を、ゾルザを除いて誰一人予見出来なかったということの主たる理由づけが「もうデタントの時代だから」ということであったことは良い教訓でありましょう。
アリストテレスの政治哲学の一つの考え方は、政治制度は循環するということです。民主主義は民衆の権利ばかり増えて政府の権威が弱くなり、やがて無政府状態の混乱になり、そこから独裁制が生まれ、それが世襲制になって君主制になり、それが貴族政治などを経て民主制になり、それがまた無政府状態に堕して行くのが一つの型であるということを、数多くのギリシャの都市国家の興亡から証明しています。

159頁
情報事務というのは、世界的にそうですけれども、共産圏情報から始まったんです。日本も今は世界中、全部見ておりますが、情報事務が始まった頃は、もっぱら共産圏情報です。ですから情報分析の手法というものはだいたい共産圏情報から始まっている。戦後、ドイッチャーとかゾルザとかいう人が出てきまして、クレムリンノロジーということが言われていたのです。犯罪学をクリムノロジーと言うもんですから、それとひっかけて、あるていど、悪口もこめてクレムリノロジーといって、クレムリンの情報を分析する、それから情報分析というのが始まったわけです。

160頁
ヴィクター・ゾルザという人は絶対に秘密情報を読まないんです。秘密情報なんか読んでもしようがないというわけで、公開情報を毎日九時間読むんです。招待してもなかなか受けないし、海外出張もしない。一週間出張したらその間の遅れを取り戻すのに大変だというんです。それでソ連のチェコ侵入を予知したり、中国の文化革命を予知した。そしていろんな賞をもらったりしていますけれども、ソ連の発表文書の中などでちょっとした違いを読みとって、今にこうなるに違いないとか言うわけです。
たとえばソ連の中で核兵器反対の記事が、二カ月ほど、どこを探してもない。おそらく水爆実験がすぐ始まるだろうと彼が予言すると、その通り実験が始まる。それがクレムリノロジーです。

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■時間的限界、能力的限界をどう受け止めるか

上述のノウハウを駆使したとして、一人の人間ができることは知れている。時間的、能力的限界は如何ともしがたい。では、分析者としてどうすべきか。

答えは、情報源を絞り込むことにある。

―― 参考情報 ――――――――――

情報源を絞り込むということ
http://sokokuhanihon.seesaa.net/article/471334693.html

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情報源を絞り込めることは、勇気がいることだ。私は若い頃、この絞り込みに失敗し、後々後悔したことがある。




文章作成スキル的には、簡潔な文章を書けることが重要。どこかのジャーナリト出身の言論人のように、一行で済むことを、金になるからと言って400字で書く必要はないのである。





以上

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