キッシンジャーの日米安保観が意味するもの
本稿は、キッシンジャー安全保障外交、特に対日外交的側面でキッシンジャーが何を意図していたのか、数冊の本から抽出、その意図について概観的に述べることを目的としている。
「日米戦争を起こしたのは誰か(加瀬英明、藤井厳喜、稲村公望、茂木弘道)」では、キッシンジャーの安全保障外交における、対中スタンスが指摘されている。
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バランス・オブ・パワーと価値観外交 藤井厳喜
バランス・オブ・パワー(勢力均衡)に関してはさまざまな定義があり得るが、ここではごく一般的な意味に解しておく。バランス・オブ・パワー外交とは、自国の国益に有利な諸国(勢力)間の平衡状態をつくろうとする外交である。自国の国益増大を至高の目標とし、道徳的配慮は第二次なものとする。
価値観が移行とは、当面の自国の国益の増大を至高の目標とするのではなく、ある価値、例えば自由やデモクラシー、を外交の目標とする外交である。安倍晋三首相は、価値観外交を前面に押し出している。これは勿論、「国益を無視して或る価値を実現する」という意味ではなく、「価値観の重視こそが、国益の増大に結果する」との信念から発した外交姿勢である。
214~215頁
二〇○五年五月七日ラトビアの首都リガで、対ドイツ戦勝六〇周年を記念してブッシュ(ジュニア)大統領は演説を行った。主たるテーマは一九四五年二月のヤルタ協定に対する批判…