後編では、ロックフェラーの石油ビジネスと中国との関係について分析を試みる。
それによって、アメリカが、アメリカに友好的な日本人から見て異常なほど戦前、戦後、中国に肩入れする理由を浮き彫りにすることにある。
まず、戦前と言えば、日露戦争の講和条約前後の鉄道王ハリマンによる、南満州鉄道の共同開発の提案。
最新日本政財界地図(17)トラウマとしてのハリマン事件
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/k6/161019.htm
さて、鉄道で運ぼうとした物は何か?
アメリカの開拓史からすると、資源であろうと私は考える。
アメリカ合衆国の鉄道史
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E5%90%88%E8%A1%86%E5%9B%BD%E3%81%AE%E9%89%84%E9%81%93%E5%8F%B2
また、鉄道敷設は、国家の主要インフラだった時代だったとみなせば、鉄道王ハリマンは、この時代、日本よりも先に満州国創設をデザインしていたかもしれない。
一方、「兵頭二十八軍学塾 日本の戦争Q&A」という本の285~287頁にこのような記述がある。
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英国を同盟国として持ち、航空のみならず陸上のモータリゼーションで米欧にはるかにで遅れていた日本は、第一次世界大戦でのドイツの負け方を見てもなお、平時からの石油資源確保の緊急性を、国家指導者層からして、認識し得なかった。
特に、石油の最大消費者となる日本海軍が、人材として「戦術馬鹿」しか育てていなかったのは、日本の不幸であった。
彼らは一九二○年代以降、米英を共にライバル視するようになっても、軍艦や飛行機を増やすことしか頭になく、石油自給の努力に向けては、ほとんど予算を割こうとしなかった。
第一次大戦がまだはじまっていない一九一三年に、清国政府側から、陝西省の油田を日支合弁で開発しいようとの提案が、日本公使の山座円次郎のところに持ち込まれた。
清国政府は一九○五年から陝西省延長県(今の延安市)での試掘に着手し、一九○七年、シナ史上最初の油田を稼働させた。しかし年産量は数万トン以上には増えず、さらなる開発は行き詰まっていた。たまたま、一九一二年は、世界の石油価格が暴騰し、シナ奥地の不便な油田にも、投資者があらわれるだろうと目論まれるようになったのだ・
山座はこの件を東京にとりついだのだが、外務省にも、他の官庁にも、政治家にも、軍人にも石油資源の確保が将来喫緊の課題になると思う者が一人としておらず、聞き流されてしまった。日本海軍の軍艦は、まだ石炭焚きボイラーから重油ボイラーへ、完全に切り替えられてもいなかった。
清国政府は、次に話を、ドイツおよび米国にもちかけ、結局スタンダード石油会社が、一九一四年の二月九日に、この開発計画をとってしまった。
満州事変を起こした石原完爾は、<シナ大陸のどこかに大きな油田があるはずだ>と、国内向けに宣伝し続けた。しかし関東軍も満鉄も、満州国北部の黒竜江省に、シナで最も大規模な「大慶油田」(一九五九年にソ連が掘り当て、中共が命名)が存在したことに、気づきもしなかった。
大慶油田は今でこそすっかり噴出量は減ったが、最盛期には日産九三万バーレルもあった。
中略
大慶油田は、日本の平時の石油需要だけでなく、おそらく戦時の受容も満たし得たであろう。
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「スタンダード石油会社が、一九一四年の二月九日に、この開発計画をとってしまった。」という一文に注目したい。
ロックフェラーがこの時点で、ハリマンと同様、中国への進出、租借あるいは独立国の建設をイメージした可能性があるのだ。
また、こんな情報もある。
米国の対支投資 輸入税前納によって市場独占の特典把握
ス石油会社の対支借款観
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/das/ContentViewServlet?METAID=00478496&TYPE=HTML_FILE&POS=1&LANG=JA
支那の石油坑 [社説]
[支那油坑採掘権問題(米国スタンダード会社獲得) (其十一)]
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/das/jsp/ja/ContentViewM.jsp?METAID=00107810&TYPE=HTML_FILE&POS=1
そして、アメリカでの日本人排斥。
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排日移民法
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8E%92%E6%97%A5%E7%A7%BB%E6%B0%91%E6%B3%95
この排日移民法によって日本は大きな移民先を失ったため、その代替として満州を重視せざるを得なくなり満州事変につながったとする見方が古くから存在する。昭和天皇が敗戦後、日米開戦の遠因として「加州移民拒否の如きは日本国民を憤慨させるに充分なものである(中略)かかる国民的憤慨を背景として一度、軍が立ち上がつた時に之を抑へることは容易な業ではない(『昭和天皇独白録』より)」と述べているのが好例である[1]。
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アメリカ社会は、日本人に敵意をむき出しにし、日本は日本で、第一大戦後の世界的不景気の中で、満州が最後の命綱となってしまった。
この時点で、日本国民の大半は親米なのだ。
そして、1932年の満州事変の勃発。アメリカは、中国に肩入れし、日本批判をさらに強め、最終的にはABCD包囲陣の形成、ハルノートを経て、大東亜戦争へと突入する。
ここで、本稿前編の投資原則を適用し、ロックフェラーの金儲けの視点で考えてみたい。
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戦前のロックフェラーシナリオ
・当面、日本に対し、戦争せざるを得ない様、追い詰めるだけ追い詰め、戦争中は軍事物資である石油の販売で儲ける
・戦争終了後は、満州の利権を根こそぎもらう
・戦争終了後は、中国に採掘権ある石油を「焼け野原の日本」に販売して儲ける
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こういうシナリオがロックフェラーの脳裏に閃いたのではないかと私は予測するのである。
この時代の日本人にとって、日本はアメリカに対し敵意を持たないのに、なぜアメリカが日本に対し執拗に反日、排斥するのか理解できなかったようであるが、
ロックフェラー流金儲け論理を適用すると
ロックフェラーにとっては、日本が南満州鉄道の共同経営を日本が断った時点で、日本と組んでもたいした金儲けに繋がらないので、前編に書いたように、日本をパートナーから外したに過ぎないのである。
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⑤欧米社会でのビジネスパートナーの扱い(ビジネス習慣)
・基本的には、儲けがでなくなるとすぐに切り捨てる
・同盟関係であっても、他に儲けが出れば過去の同盟関係を犠牲にしてでも未開拓市場を優先する
・同盟関係でない投資の場合は儲けが出なくなった場合、即時撤退
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実は、私は、アメリカ企業の役員から、アメリカのビジネス習慣がどのようなものであるか、お聞きしたことがある。
内容的には、パートナーとは、双方がWIN-WINの関係にある間だけの付き合いとみなしていたようであった。
要するに、敵と味方の入れ替わりが激しい世界ということである。
私は、ロックフェラーについては
「戦争ビジネス」というビジネスモデルをいち早く構築し
石油市場における「独占状態」を維持、拡大することで利益を極大化させ
大統領を操り、相手国のナショナルプロジェクトに参画し
誰も見向きもしない時点で(利権、株式等の)底値買いをした
点において
本当に血も涙もない悪党であるような気がしている。
また、昨今は、中共の株式市場で、世界有数の中国企業の上場が相次いだ。上場益の相当部分について国際金融資本が独占した可能性はあるだろう。
少し脱線してしまった。
次に、ベトナム戦争終結後の米中接近について分析を試みる。
既に、朝鮮戦争、ベトナム戦争を経て、ロックフェラーは戦争ビジネスで大儲けした。(はずである。)
ところが、ベトナム戦争終結後は、これといった金儲けの手段が見当たらない。
そこで、この時点でロックフェラーが描いたであろうシナリオについて、本稿前編の投資原則を適用し、記述を試みる。
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戦後のロックフェラーシナリオ
・戦前に獲得した、延安の石油採掘権のことがあり、この辺で中国と対話することで、中国での石油ビジネスを本格化させたい(中国の石油を石油の大消費国の日本に輸出することを画策?)
・同時期、日本の尖閣諸島周辺で発見され、埋蔵量が確認された石油資源については、当時の佐藤首相は、日本としては独自開発するとのスタンスであるとのことであり、日本に尖閣の石油採掘を独占させたくないので、米中協力して日本に圧力をかけたい。
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こんな情報もある。参考となるのでコピペさせていただく。
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・アメリカ様の言うことを聞いてメジャーと尖閣の石油を共同開発していれば、尖閣問題はなかったんだぞ!(アメポチ)
http://www.asyura2.com/13/senkyo144/msg/208.html
すでにその当時から、尖閣諸島周辺に海底油田の可能性が高いということでアメリカの
メジャー筋から密かに日米共同開発の申し出があったが、佐藤総理はそれを拒否し、
メジャー側はならばと相手を変えて台湾に持ち掛けていた。
それに刺激され台湾側は
にわかに尖閣の領有を主張し出し、それにつられて北京までが同じ主張を始めた・・・
一方,尖閣諸島の問題では,
《尖閣列島周辺の海底に油田があるという話が持ち上がって…返還前…アメリカのメジャー?の石油会社が、時の佐藤首相に、外相がらみで彼らによる試掘を持ちかけてきた。佐藤首相は自国日本のことだからといってそれを退けた。
すると彼らは同じ話を台湾と北京に持ち込み、「あの島々は本来なら中国の領土の筈だ」とそそのかした。その話に乗った中国は突然、武装した漁船団を送り込み、威嚇しながらあれらの島々の領土権を主張しだした。北京がそういいだせば台湾もまたいきがかり上、こちらもあれらの島は台湾に帰属すべき領土であると主張した》(石原慎太郎・江藤淳『断固「NO」と言える日本』(光文社)pp. 96-97)
◆尖閣は日本国家存亡の試金石!
http://mizumajyoukou.blog57.fc2.com/blog-entry-181.html
日本政府の不作為は、沖縄返還交渉過程で米国から、尖閣海底油田の共同開発を打診されたが、佐藤栄作元首相はそれを蹴ったことにあります。
当時、米国は「沖縄政府」の要請に応じて、米軍が協力し尖閣5島に、領土表示板を設置していました。
佐藤元首相が断った以降、米国の石油メジャーは、尖閣諸島は台湾に帰属すると申し入れ、台湾から尖閣海底油田の鉱区権を手に入れています。
その動きに呼応するように、1972年5月15日の沖縄返還の前年、1971年6月に台湾政府は尖閣諸島の領有を主張して来ました。
そして、台湾は中国の領土と主張する中国政府は、同年12月に尖閣諸島の領有を主張し始めたのです・・・
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要するに、尖閣問題の核心は、
言うことを聞かない日本に言うことを聞かせ、アメリカ石油資本が独占的に金儲けするために、石油採掘のためのパートナーを日本から台湾そして中共に乗り換えるべく、画策した結果の可能性大なのである。
この時点での石油資本による工作が、その後、中共を本気にさせ、アメリカの覇権を脅かす状況となった。
そこで、オバマが来日時、尖閣は日米安保の適用対象であると明言することになる。
当然、オバマにそう発言させるために、安倍首相は、ちゃっかり代替措置を幾重にも準備し、ロックフェラー来日以降、反応をみながら小出しに示唆したに違いないのだ。
以下は、推測である。
私が、首相の立場なら、この程度のことは、語っているであろうという前提で書かせていただく。
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ロックフェラー来日時に、安倍首相がロックフェラーに示唆したと思われること
・日本のシエールガス輸入拡大への協力要請
・アメリカにリニア技術を提供することを申し出、ロックフェラーは、アメリカ鉄道業界に進出を狙う?
・日米安保が堅持されるなら、ロックフェラーに尖閣採掘権付与を考慮
・イスラエルへの側面支援申し出(軍事技術共同開発、経済協力など)
・TPPについては、確約はできないが代替措置を準備(アメリカ軍の肩代わり=集団的自衛権見直し)
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ロックフェラーは、中共でのバブル崩壊、サムソンのビジネスモデル崩壊について、承知しており、新たな金儲けのネタを仕込みたがっている状況での来日と考えれば、
この条件なら、ロックフェラー金儲けのパートナーとして日本(安倍政権)と組みたいと思うのではなかろうか?
その後、ロックフェラーの来日、オバマの来日を経て、イスラエル首相が来日した。
拙ブログはかく分析した。
安倍外交 イスラエル首相来日が意味するもの
http://nihonnococoro.at.webry.info/201405/article_11.html
そして、つい最近、産経にて、実に興味深い記事が配信された。
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伝統的な親日国だったはずのイランが、急遽反日に転じたのだ。
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http://sankei.jp.msn.com/world/news/140623/mds14062311250007-n1.htm
対日批判に急転換したイラン 中韓接近も
2014.6.23 11:25 (1/3ページ)[中東・アフリカ]
イランの対日観が変化しつつある。6月18日、イラン国営「イランラジオ」が、安倍晋三政権を非難する「東アジアの軍拡に対する懸念」と題する奇妙なホセイニー解説員による論評を報じた。「イランラジオ」は、政府の完全な統制下にあるので、これはイランから日本へのシグナルだ。(SANKEI EXPRESS)
<韓国が新たに日本の軍拡に懸念を示しました。韓国・ヨンハプ通信が北東アジア歴史財団のソク・トンヨン事務総長の記事として伝えたところによりますと、日本の安倍総理大臣の軍拡とアジアにおける大きな軍事力の創出に向けた動きは、懸念を引き起こすものであるとしています。ソク事務総長はまた、ダブルスタンダード的な措置と軍拡に向けた時間稼ぎに関して、安倍首相を非難しています。
日本で安倍首相率いる右派が勝利したことで、日本の軍事政策に対する懸念が近隣諸国の間で高まっています。とりわけ安倍首相が当選後すぐに、防衛政策の変更と憲法9条の改正を目指すようになりました。憲法を変更することで、日本は戦争を行う為に国境を越えることも禁止されなくなります>
韓国からの一方的情報に基づいた日本批判だ。安倍政権を「右派」と位置づけ、安倍政権が力を持っていることが、「日本の軍事政策に対する懸念が近隣諸国の間で高まっている」原因と決めつける。
さらに日本の憲法改正に対する中国、韓国の立場への共感を隠さない。
<確かに安倍首相は、改憲しても、日本は戦争放棄を守ると表明しています。しかし、中国や韓国は依然として日本の改憲とそれによる結果について懸念しています。これ以前にも中国は安倍首相の防衛力増強、最新鋭の兵器の製造、西側からのより多くの軍事物資の購入にむけた努力を批判し、「日本はアジアの支配を目的とした軍事勢力に変化しようとしており、地域の平和を危機に陥れる」としています>
その上で、日本の武器輸出の緩和に対して懸念を表明する。
<実際、日本の防衛政策変更や武器輸出に関する法律の改正に向けた急速な歩みは、4月から急速に懸念を高めています。ある日本のニュースチャンネルは17日火曜、日本政府は武器の輸出が緩和されてからはじめて、防衛産業の国際見本市ユーロサトリ2014で軍事技術を展示したと報道しました。この報道によりますと、日本企業10社以上が装甲車、ヘリコプター、パラシュートなどの防衛装備品をこの見本市で展示しています。ユーロサトリ2014はフランス・パリで16日月曜から開幕し、20日金曜までの日程で行われます。この世界最大の防衛産業の見本市は、ロシアなど57カ国1500社の企業が参加し、開催されています>
これまで「ラジオイラン」は、日本に対しては、好意的な報道を基調にしていた。イランの親日感情を強調することで、米国の同盟国である日本に、米国とは一線を画した親イラン政策を取らせるための世論誘導を行うことが「イランラジオ」の役割だったからだ。しかし、イランは、安倍政権に対して、急に批判的になった。それは、5月12日に東京で安倍晋三首相とネタニヤフ・イスラエル首相が「日本・イスラエル間の新たな包括的パートナーシップの構築に関する共同声明」に署名したからだと筆者は見ている。
この共同声明に基づき、日本は、安全保障面でのイスラエルとの提携を急速に進めている。「敵の敵は味方だ」というマキャベリ流の外交をイランは行う。日本とイスラエルが接近することに対抗して、日本との関係が良くない韓国、中国にイランは擦り寄ろうとしているのである。今後、韓国、中国がイランを巧みに用いた反日策動を強化する危険を過小評価してはならない。(作家、外務省主任分析官 佐藤優)
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私は、佐藤優は嫌いな評論家ではあるものの、この分析記事は妥当な内容だと判断し転載させていただいた。
イスラエル首相の来日、そして、共同声明によって、イランが、日本の武器輸出に係わる法改正で最もメリットを受ける国がイランと敵対するイスラエルであろうと、イランが認知したようである。
それでは総括に移りたい。
確かに、ロックフェラー一族は、世界史上、どうしようもない悪党である。
悪党ならば裁かれなければならない。
東京裁判のA・B・C戦犯になぞらえると、超々A級となろう。
だが、安倍政権にその課題を担わせたとしても、今は、国際石油・金融資本の力(総資産規模500兆円?)が巨大過ぎて手が出せない。報復など不可能ではないかと思われる。
ただ、安倍政権は、「国民の生命と財産を守る」という使命感が戦後のどの政権よりも強い。
中共の軍事力が台頭し、ロックフェラーが仕掛けた策略が巡り巡って、アメリカの覇権が脅かされつつある中で、安倍政権が悪魔と手を結ぶことは、政治倫理上問題であるかもしれないが、これも国家・国民を守るために、せざるを得なかった選択であろうと私は理解し、本稿を終えることとする。
私は、一人の国民として
安倍政権の安全保障外交が成功裏に進み、継続され、維持されることを望む次第である。
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