北海道で起きた大停電に係わる報道から、いくつかの記事を比較し、まともな新聞社とダメな新聞社、何が違うのか検証を試みる。
■ケース1 北海道新聞の社説
大停電を起こした、という視点で、大停電を起こしたのだから、電力会社に責任があるという論調である。
供給量(発電電力量)、需要量(電力消費量)、系統周波数の数字を見なくても、大停電の原因は、明らかだとするスタンスである。私は、パニック消費を疑っているが。
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記事1 知ったかぶりの論説?
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/226063
胆振東部地震 北電の責任 極めて重い
09/08 05:00
北海道胆振東部地震は一時、道内全域が停電となる「ブラックアウト」を引き起こした。
震源近くにある北海道電力苫東厚真火力発電所が運転を停止し、稼働中だった他の発電所も連鎖的に止まったのが原因だ。
交通機関や病院をはじめ、暮らしに不可欠な都市機能が突然まひし、道民を不安に陥れた。
大地震への十分な対策を取らなかった北電の責任は極めて重い。停電が続く地域の復旧を急ぐと同時に、この事態を招いた原因の究明と対策の徹底を求めたい。
電力供給では、発電量と消費量を一致させないと、発電機が壊れる恐れがある。このため、需給バランスが崩れた際に稼働中の発電所を停止させる。
全面停止を避けるには、電源を分散させ、一つの発電所が止まってもバックアップできる態勢を築いていなければならない。
ところが、北電の場合、道内の消費電力のほぼ半分を苫東厚真1カ所で供給している。
不測の事態が生じれば、待機中の発電所ではカバーしきれず、ブラックアウトに直結することは事前に分かっていたはずだ。
苫東厚真では3基の発電機全てが地震で使えなくなった。北電は「3基とも損壊し、長期間止まることは想定していなかった」と言うが、認識が甘いのではないか。
東日本大震災によって福島原発事故が発生し、その後も各地で大地震が頻発してきたことを考えれば、「想定外」は言い訳にしか聞こえない。
電力の安定供給よりも、電源の集約による経営効率を優先したと言われても仕方ないだろう。
地震発生時、本州の電力会社からの支援機能が働かなかったのも問題だ。北海道―本州間の送電線「北本連系線」を使って電気を流すには、道内側で一定の発電所が稼働している必要があるという。
これでは今回のような大型電源の停止には対応できない。
来年には石狩湾新港の天然ガス火発の稼働と北本連系線の増強が予定されている。北電は、電源の分散に加え、北本連系線の技術的な障壁の解消も急いでほしい。
運転停止中の泊原発は停電の影響で、使用済み核燃料プールを冷却する外部電源を一時喪失。非常用電源が作動して冷却を続けた。
9時間半後に外部電源が復旧し、大事には至らなかったとはいえ、震源が発電所に近い場合の対応は万全と言えるのか。徹底した検証が不可欠だ。
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■ケース2 化学工業日報
化学工業日報は、想定の範囲だけでなく、未経験・未発生の事態を視野に入れるべきだとしている。
原発全台停止や北本連携線の容量増加について、言及はないものの、大停電について、「ブラックアウトの原因は単純ではないが、一発電所への依存度が高すぎたことが主因のひとつ」と、大停電が歴史的に珍しいものであることを知っていて書いている点において、技術に詳しい業界紙としての最低限の良心を感じる。
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想定の範囲をこえて非常時への備えを
2018年9月10日NEW
このところ毎年のように、全国のあちこちで観測史上の最大値を更新する規模の集中豪雨や台風に見舞われる。「これまでに経験したことのない~」という表現が使われるが、大規模自然災害が頻発するうちにインパクトが薄れた感もある▼6日未明に北海道を襲った地震は最大震度が7。内陸を震源とする地震では過去最大級だ。激しい揺れが土砂崩れや家屋の倒壊、液状化など甚大な被害をもたらした。そして地震による北海道全域の停電は「これまでに経験したことのない」衝撃的な事態▼震源地に近い苫東厚真の石炭火力が緊急停止。それを端緒に道全域の発電設備が自動的に止まった。苫東厚真は発電能力165万kWで道内の需要の4割以上を賄う。これが瞬時に失われたため需給バランスが崩れ他の発電所も停止した▼ブラックアウトの原因は単純ではないが、一発電所への依存度が高すぎたことが主因のひとつ。北海道電力はソース多様化のため石狩湾にLNG火力の新設備を建設中だが、天災は年度内完成を待ってくれなかった▼災害発生の度に強調されるのが企業のBCP(事業継続計画)の重要性。想定の範囲だけでなく、未経験・未発生の事態を視野に入れた組み立てが必要になる。考え出せばきりがないことながら、非常時への備えとはそういうものなのだろう。(18・9・10)
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■ケース3 読売新聞のケース
社説としては、計画停電の回避に全力をあげよとしている。
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北海道地震 計画停電の回避に全力挙げよ
2018年09月13日 06時06分
北海道地震の発生から1週間が経過した。道内全域の停電は、ほぼ解消したが、深刻な電力不足が続く。官民の努力で難局を乗り切りたい。
地震による死者は40人を超え、負傷者も多数に上る。今も大勢が避難所で暮らしている。政府は救援の手を緩めてはならない。
発生後、道内の経済活動は停滞した。農水産品の出荷は止まり、営業できない店舗も相次いだ。停電解消で、企業活動は正常化してきたが、危機は去っていない。
最大の懸念材料が、電力不足の長期化である。世耕経済産業相は、停止中の苫東厚真火力発電所について、全面的な運転再開が11月以降になるとの見通しを示した。
北海道電力がこれまでに確保した供給力は約350万キロ・ワットで、ピーク時の電力需要380万キロ・ワットより1割ほど少ない。点検中の発電所などを順次、稼働していくが、老朽化した発電所も多く、電力需給は綱渡りの状態である。
さらに、暖房が使われる秋から冬にかけて、電力需要は500万キロ・ワット以上へと跳ね上がる。道内最大の火力発電所である苫東厚真の復旧が遅れれば、計画停電も現実味を帯びてこよう。
政府は道内を60地域に分け、2時間ずつ順番に給電を止める手法を想定している。実施すれば、日常生活や経済活動への悪影響は大きい。できる限り避けたい。
政府が道内で節電を呼びかけているのは当然だ。使わない家電のコンセントは抜く。オフィスの照明を一部消す。そんな地道な取り組みの積み重ねが大切だろう。
場合によっては、工場などに電力使用を控えてもらう需給対策も課題になるのではないか。
発電設備の損壊を防ぐための停電にはやむを得ない面もある。ただ、北海道電の初動対応に問題はなかったのか、検証が必要だ。
大停電の主因は、道内の電力供給を苫東厚真に過度に頼ったことである。北海道電の責任は重い。泊原子力発電所は再稼働が見通せない。北海道電は、安定電源の確保や分散化を急ぐべきだ。
本州側から電力融通を受けるための連系線は、容量が60万キロ・ワットにとどまる。今年度中に90万キロ・ワットにする工事を進めている。さらなる増強も検討課題となる。
一部の企業や病院では、備蓄燃料の不足などで非常用電源が十分機能せず、混乱を招いた。
北海道に限らず、病院など公共機関や企業は業務継続計画(BCP)を始め、災害時のリスク管理体制を再点検してもらいたい。
2018年09月13日 06時06分
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大地震そのものについては、原因調査の視点から四つの記事を配信している。
・一つ目の記事
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https://www.yomiuri.co.jp/economy/20180910-OYT1T50043.html?from=ytop_top
地震発生17分後、3基目停止でブラックアウト
2018年09月10日 15時00分
北海道地震で道内ほぼ全域が停電となった「ブラックアウト」は、苫東厚真火力発電所(北海道厚真町)の1号機(出力35万キロ・ワット)が、地震発生から約17分後に停止したのが引き金だったことが分かった。地震直後に停止した2号機、4号機と合わせ想定を超える出力を消失。一部地域を強制的に停電させても需給バランスを維持できず、ブラックアウトを引き起こしたとみられる。
震源に近かった苫東厚真の出力は計165万キロ・ワットで、道内約300万キロ・ワットの電力需要のおよそ半分を賄う基幹的な発電所だった。3号機はすでに廃止されていた。
北海道電力などによると、地震発生直後の6日午前3時8分頃、2号機と4号機が地震の揺れで緊急停止。1号機は稼働を続けていた。電力は需要と供給のバランスが崩れると、周波数が乱れて発電機が損傷する恐れがある。このため、北海道電は、失われた供給分(約130万キロ・ワット)に見合うように一部の地域を強制的に停電させて需要を落としバランスの維持を試みた。
しかし、地震発生から約17分後の午前3時25分頃に何らかの原因で1号機が緊急停止した。強制停電による需給バランスの維持が間に合わなかったとみられ、同時刻に知内、伊達、奈井江の三つの発電所が発電機の損傷を防ぐため自動的に停止。すべての発電所が停止するブラックアウトとなった。
北海道電は、最大129万キロ・ワット分の発電所の停止までは想定していた。
2018年09月10日 15時00分
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・二つ目の記事
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https://www.yomiuri.co.jp/economy/20180912-OYT1T50120.html?from=ytop_top
強制停電3回目「不発」、ブラックアウト招く
2018年09月13日 06時00分
北海道で発生した最大震度7の地震から13日で1週間となった。地震直後に道内ほぼ全域が停電したブラックアウトに至った経緯が判明した。北海道電力は地震直後から電力の需給バランスを回復するために強制停電を3回発動したが、3回目は需給バランスを回復できずにブラックアウトとなった。
政府・北海道電などは初動対応が適切だったか検証を進める。
北海道地震は6日午前3時7分に発生した。政府や北海道電などによると、震源に近い苫東厚真とまとうあつま火力発電所(厚真町)の2号機(出力60万キロ・ワット)と4号機(70万キロ・ワット)が午前3時8分、緊急停止した。
電力は需要(消費量)と供給(発電量)のバランスが崩れると、周波数が乱れて発電機などが損傷する。災害などで発電所の電力供給が失われた場合、一部地域を強制的に停電させて需要を落とし、需給バランスを回復するシステムがある。
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2018年09月13日 06時00分
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・三つ目の記事
・四つ目の記事
三つ目、四つ目の記事が特に重要である。経済産業省が大停電報道について、主導的立場であるように思う。
実質的に独占供給している電力会社による大停電であることは確かだが、主観を排し、データを揃えつつ、合理的な説明をしようとしている。
穿った見方をすると、電力会社は原因究明済みであるものの、経済産業省が、原発再稼働のシナリオに乗せるべく、世論の反応を確かめつつ世論を誘導する目的で、小出しに情報開示しているような気もする。
大停電、系統周波数が46に達したことから、需要に対し明らかに供給不足であることは、確定した。
■本稿のまとめ
需要は、通常日の深夜帯と同様、安定的だったのか、そうでなかったのかは、まだ、報道されていない。そして、地震発生してから大停電に至る17分間の需要(電力消費量)の推移、強制停電できた電力消費量は、まだ発表になっていない。
私は、パニック消費を疑っている。17分間の需要の推移、供給量の推移、系統周波数の推移、強制停電の実施状況、発電所の緊急停止、これら大停電に関係するすべての情報が揃い、公開されてからでないと、大停電の原因は特定されず、再発防止対策も検討されるべきではない。
北海道新聞は、すべてのデータが揃わないうちに、悪いのは電力会社と決めつけた。化学工業日報は、「ブラックアウトの原因は単純ではないが、一発電所への依存度が高すぎたことが主因のひとつ」としつつも、備えの強化の必要性を説いた。
読売は、取材を重ねつつ、核心の情報について、一つ一つ取材を通じて入手?、我々は漸く、真実は何であったのか、知る一歩寸前のところに来ている。読売は、このテーマについては、誤報はない、偏向記事はないようだ。
当然の事だが、保険会社の事故処理担当は、間違っても、北海道新聞のような判断を下すことはない。速報レベルで保険金を支払う、馬鹿な保険会社は世界中見渡しても、一社もないはずである。
北海道新聞の社説は、「田舎の痴呆紙の社説は、所詮便所の落書き程度でしかない、と見下されても仕方がない」内容だったということである。
同様に、ローカルの月刊誌でも似たような傾向の記事があることを見つけた。
―― 参考情報 ――――――――――
「北海道全域ブラックアウト」は北電による人災ではないか
http://hoppojournal.sapolog.com/e472291.html
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北海道新聞社説と同じノリで書いた感じである。
論説主幹として、当該分野の技術的なスキルを有さないのであればなおさら、速報レベルで早とちりしたり決めつけたりせず、専門家の調査検討結果を待ち、主観を排した、取材・報道態度であるべきだと考える。
そういう点において、反日新聞社の論説主幹たちは、結論が確定しない段階で、結論ありきで記事を書きたがる傾向にある点において、「総じて色眼鏡」傾向、「総じて早とちり」傾向にある、と断定して構わないのではなかろうか?
そして、反日新聞社の関係者は、ネット情報を信頼できないとするスタンスで報道し続けているが、これに対し消費者側の視点に立ち、まともな新聞社と反日新聞社の記事、どう違うのか、比較して示すことは、彼らの意図を挫く最強の手段となることを強く意識する必要があるのではなかろうか。
以上
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