許認可実務について

本稿は、最近話題となっている許認可事案を想定したもの。

数多ある政治ブロガーの中で、実務にて許認可、官庁対応した経験者は少ないと判断、経験談を述べさせていただく。

以下に述べることは、政治的あるいは道徳的に正しいとか、そうでないとかという類の価値観に基づくものではない。世の中のビジネス実態(常識)はこうなっている、という意味でお読みいただきたい。


■許認可を受けようとする組織の代表がなすべきこと

組織の代表がやるべきことは、基本的に、名刺を持参、挨拶廻りすること。担当部局の人が不在なら、名刺を置いて帰ってくることになる。挨拶廻りする頻度は、年末年始、年度替わり、許認可事案提出直前。本省許認可事案の場合、大臣、副大臣、政務官、事務次官、局長、課長クラスまで廻ることになる。
仮に私が80歳前後の社長だったとして、30歳くらいの官僚に頭を下げることを想定している。自分の孫世代に頭を下げ、許認可事案の対応をお願いすることをビジネス常識として理解できない人は、許認可事案の責任者になるべきではない。


■実務責任者がなすべきこと


(1)法規制強化への対応

仮に、許認可関連の法規制が強化され、許認可されない場合があらかじめ予見される場合、実務責任者は、当該法令を繰り返し読み、疑問点があるなら疑問点としてリストアップ、対応方針を示したものを文書として取りまとめ、当該組織代表者の決裁を得た後、当該官庁に出向き、疑問点についての解釈、見解を確認しなくてはならない。この作業を省略し、一発で許認可事案として提出した場合は、許認可対応的には無謀なやり方となる。
官庁対応後は、当該組織において対応議事録を作成、組織代表まで報告することになる。


(2)過去の許認可事案の検証

継続的な許認可事案の場合、官庁からそれなりの指示・指摘事項が文書にて示され、官庁側は記録文書として保管し、以降の許認可に際して以前の指示・指摘事項が改善されたか、確認したうえで許認可すべき事案かどうかを判断することがままある。
許認可事案が門前払いで却下されるのは、過去の許認可事案への対応改善措置が十分ではない場合、893など反社組織事案であることなどが該当する。(役人から、反社組織事案を受付処理するつもりはないとの見解を聞いたこともある)
従って、許認可規制強化により、不許可となることが予見されるなら、予め過去の許認可事案、特に、指示指摘事項についての内部検証を行い、必要な点について官庁に出向き、再度見解をいただき、官庁対応後は、当該組織において対応者は、対応議事録を作成、組織代表まで報告することになる。


(3)例外的な措置のお願い

前例のないケースで、二、三度経験したことがある。悪くとられると、(担当者である私が)当該官庁出入り禁止となるリスクがあるため、用意周到に準備、当該官庁に対しどのような言いぶりで相談するか、(言いぶりの文章をそのまま)伺い文書形式にして上司の決裁を取り、そのうえで官庁対応した。結果は、こちら側の要望に沿う形で実現した。
別にへりくだる必要はない。正々堂々と主張することは主張し、役所を訪問し相談にのっていただくのである。有難かったのは、官僚の中に私と同じ中学、同郷の方がおられたことである。官界では東大卒ばかりが出世すると言われているが、各大学、同郷のチャンネルが役立つとは思ってもみなかった。
官庁対応後は、当該組織において対応者は、対応議事録を作成、組織代表まで報告することになる。


■政治家への挨拶廻り、陳情はいつなされるべきか

これは、より政治的な事案に限定しての話である。政治家から社長に直々に電話がかかってくる時代もあった。今はそうではないようだ。
当初予定どおり許認可さえることが予見される場合、年末年始ないし、当該重要事案の許認可直前において、組織代表は挨拶廻りあるいは、陳情することになる。
将来的に許認可上、不許可となることが予見される場合は、(1)許認可関連の法規制強化への対応、(2)過去の許認可事案の検証、(3)例外的な措置のお願いなどの経過を踏まえ、当該許認可事案の前年度に、大臣、副大臣、政務官に相談に行くことになる。



■本稿のまとめ

上記で述べたことは、当該官庁本省許認可事案に関する、経験に基づく私見である。
民間企業によっては、天下り、パーテイ券等の購入を持ちかけるケースがあるかもしれないし、大学の同窓同士ということで、コッソリなあなあでやっているケースもあるようだ。
東大卒が数多く入社する一流企業の場合は、(大学・高校時代の成績が下の順位の、同期の)官僚を格下扱いするという噂がある。経団連や業界団体には、東大卒のやり手が要職に鎮座、業界団体として官界に睨みをきかせているとの情報がある。業界(団体)側が強すぎる場合、実務を知らない官僚側が財界や企業団体の思惑に引きずられることになる。

しかし、許認可の実務は、実態的に、組織代表が自分の孫世代の官僚に頭を下げ、地道にコツコツやることが基本。

そこに、愛国であるとか、保守であるとか、モラル、道徳が入り込む余地はない。法律や法律が規定する文書をよく読み、法律が規定する条件に適合しようとする努力が求められる。

それでも、愛国、保守であらんとするならば、法改正、パブリックコメント等に際し、許認可に無関係な別動隊を組織、有力政治家、与党、官庁にアクセス必要がある。パブリックコメントがあるなら、意見が言える絶好の機会到来と捉え、包括声明を出すべきだ。機会は、愛国保守、反日左翼側両方に均等に与えられているのである。

勝負事では機会をきちんと利用した方が、勝利するのは世の常。
要するに、許認可に際して、やるべきことをやった組織のみが許認可を獲得できるのである。

受験勉強も同じ。東大医学部あたりに現役合格できる天才を除き、普通の凡人はやるべきことをまずやる。

仮に、道徳的に正しい事案だとしても、許認可の可能性があるのは、例外的措置としてどこまで食い込めるか程度である。ゆえに、許認可実務上の、法規制上の解釈、パブリックコメント、陳情書等の提出、挨拶廻りについて、鈍感であってはならないのである。

さらに言うと、(愛国保守、道徳の視点から)問題だと思われる現象が数多あるなら、それらの事象すべてを根絶すべく、日常的に陳情書を提出することを含め全国規模の組織的ロビー活動は必須となるのである。

以上

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