「日米戦争を起こしたのは誰か(加瀬英明、藤井厳喜、稲村公望、茂木弘道)」では、キッシンジャーの安全保障外交における、対中スタンスが指摘されている。
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213頁
バランス・オブ・パワーと価値観外交 藤井厳喜
バランス・オブ・パワー(勢力均衡)に関してはさまざまな定義があり得るが、ここではごく一般的な意味に解しておく。バランス・オブ・パワー外交とは、自国の国益に有利な諸国(勢力)間の平衡状態をつくろうとする外交である。自国の国益増大を至高の目標とし、道徳的配慮は第二次なものとする。
価値観が移行とは、当面の自国の国益の増大を至高の目標とするのではなく、ある価値、例えば自由やデモクラシー、を外交の目標とする外交である。安倍晋三首相は、価値観外交を前面に押し出している。これは勿論、「国益を無視して或る価値を実現する」という意味ではなく、「価値観の重視こそが、国益の増大に結果する」との信念から発した外交姿勢である。
214~215頁
二〇○五年五月七日ラトビアの首都リガで、対ドイツ戦勝六〇周年を記念してブッシュ(ジュニア)大統領は演説を行った。主たるテーマは一九四五年二月のヤルタ協定に対する批判であった。中略
ブッシュ外交の面目躍如たる演説であった。
これと全く対照的なのが、キッシンジャー氏の思考法である。キッシンジャー元国務長官はいまだ健在であるが、彼の外交分析を見ていると、現在のシナが共産主義独裁国家であり、国内では自由やデモクラシーはおろか、法治主義すら全く無視されている、という事実に対して、全く一顧だに与えていない。キッシンジャーにとって問題なのは、国際関係においてアメリカが占める位置なのであって、各国の国内状況がどうだろうと、それは全く彼の関心外の事である。各国政府の道徳的正当性などは、彼の視野にはない。同氏は今日も中共政府の公然たるアドバイザーである。
価値観重視なのか、バランス・オブ・パワー(ということは直接の国益)重視なのか、というのは、アメリカのみならず、全ての民主国家の外交の抱える課題といってよいだろう。カーター外交は米リベラル派による価値観が移行であり、その直前のニクソン・キッシンジャー外交への明らかな反動であった。価値観外交といっても、レーガンやブッシュ・ジュニアの保守派のそれもあれば、カーターのリベラル派のそれもあり得るのである。
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中共が軍事的に膨張、歯止めがかからなくなったのは、キッシンジャー外交の破綻を意味する。
キッシンジャー外交デビューした時代に戻って眺めてみたい。
キッシンジャーが、敗戦国日本をどう見たかに関し、「"悪の論理"で世界は動く 地政学ー日本属国化を狙う中国、捨てる米国」(奥山真司)にてキッシンジャー語録が読める。
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17~19頁
麻生太郎首相が在籍していたことで知られる日本青年会議所の現在(二○○九年度)の会長が、以前、キッシンジャー元国務長官と会談する機会があった。
沖縄出身である彼は、日米問題についての思い入れがことのほか強かった。そこで、会談の機会を与えられたのを幸い、ここぞとばかりに積年の思いを込めて、こう切り出した。
「日本は歴とした独立国であり、日米は同盟国である。にもかかわらず、現在は、独立国、同盟国として扱われていない」
すると、キッシンジャーはこともなげにこう切り返した。
「何を言っているんです。あなた方は一度負けたんですよ。お忘れですか」
キッシンジャーの発言からもわかるように、アメリカは日本を対等な同盟国として認め、共に発展の道を進もうという意思を持ってはいない。もちろん、アメリカに関係のないところで日本がどうしようと勝手だし、経済発展するのもおおいにけっこうなことで、アメリカの発展の邪魔しない限り文句は言わない。ただ、「安保条約で守ってやる代わりに、アメリカの手駒としてせいぜい利用させてもらう」というのが、アメリカの考える日米関係の底にある本音と言っていい。
それであれば、逆に日本もアメリカをせいぜい利用すればいいのだが、独自の戦略を持っていないために、アメリカの戦略に相乗りするしかなく、いつも彼等の都合のいいように利用されてしまうという流れになってしまう。
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そして、そのキッシンジャーは日米安保をどう位置づけたか。
「仮面の日米同盟」(春名幹男)の記述を参照したい。
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185頁
「日本はくくりつけるべき」
会談は一九七一年十二月二十日、大西洋の英領バミューダで行われた。
ニクソンはこの中で「日本人はアジアの至る所にシラミのように群がっている」と失礼なことを言ってのけた後、「日本は今では核能力を否定されている。だが、米国の核の傘が信頼されなくなれば、日本に対する影響力は破滅的だ」と述べている。
これに対して、ヒースも「われわれは日本をくくりつけておくべきだね」と答えると、ニクソンは「われわれは日本を完全に孤立させるべきではない」と強調した。英国首相に対するこの発言はニクソンの本音の日本観とみていい。日本の「再軍備」「核武装」への懸念は必ずしも対中交渉のためだけではなく、ニクソン自身が日本に対して抱いた強い疑念が根底にあるとみられる。
188~189頁
日本は「初歩的な同盟国」
では結局、この米中和解劇で、日本はどのような国と位置付けられたのか。キッシンジャーは一九七三年二月付けのニクソンあてメモで次のように記している。この文書はニクソン大統領図書館で入手した。
中国は過去二十ヵ月で日本と米国に対する態度を大きく転回させた、(略)周はなお日本軍国主義の脅威の継続を認識しているが、今では明確に米国の初歩的な同盟国と考えている。(略)彼は今では安保条約が日本の拡張主義と軍国主義に対するブレーキであると認識している。
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ニクソンは、開戦時のルーズベルト大統領と同じ発想する人物と思われる。
キッシンジャーは、中共に対しては大甘で、日本に対しては常に懐疑的。これは何を意味するか。
キッシンジャーが仮にロックフェラーの雇われ人だとすれば、数々のキッシンジャー発言は、ロックフェラーの本音を代弁しているとみることができる。
―― 参考情報 ――――――――――
キッシンジャーの正体
http://gendaishi.jugem.jp/?eid=1247
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松尾文夫「アメリカ・ウォッチ」では、キッシンジャーが米中国交再開目的?についてかく分析している。
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http://matsuoamerica.sakura.ne.jp/id-3/2005/2005_09_.html
米公文書館の開示記録によると、ニクソンが毛沢東と歴史的握手をかわしたあとの米中対話を総括して、キッシンジャーは一九七三年三月三日、日米安保条約が日本の拡張主義と軍国主義に対する歯止めとなることを中国側に二〇ヵ月かけて認めさせた、と誇らしげに報告していたことを思い出した。
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中共に日米安保の成果を認めさせた、とするキッシンジャーの対応から、尖閣問題は、アメリカが中国にそうする様、けしかけた結果と読むことができそうだ。
「国際情勢判断 歴史の教訓・戦略の哲学」で、岡崎久彦は、キッシンジャーの能力を認めつつかく評している。
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国際情勢判断 歴史の教訓・戦略の哲学
岡崎久彦
135頁
キッシンジャー批判
憶測と事実誤認
理論と地域研究とは本来車の両輪でなければならない。キッシンジャーは当代一流の理論家(コンセプショナル・シンカー)である。その理論家が、自ら肌で知っているヨーロッパとアメリカについて語る時はほとんど隙がない。しかし、土地勘のない場所で物事を図式的(スキマティック)に捉えようとすると種々の危険を冒さねばならない。人間はすべての地域においてすべてを知る事は不可能である。まして極東は、歴史の長さから言っても、それを知るために最低読まねばならない古典の量から言っても、西欧全体に優るとも劣らないものがあり、それを知らないからと言って、キッシンジャーを責めることはできない。ただ、彼の論旨の中で「殆い」点を指摘しておく事は私の義務と考える。
136頁
キッシンジャーは一貫して、日本は再び強大となり、アメリカから離れて独自に行動しようとするから、これを中国とのバランスで抑えなければならない、というコンセプチュアル・フレームワークを持っている。しかし、その前提には二本がそうなるという蓋然性が証明されねばならないが、その証拠が右の宮沢発言だけでは惨めである。
この命題は議会証言でも繰り返し表現されている。冷戦後の国家間の摩擦は「日米同盟を含めて、既存の同盟関係を変えるであろう」「日本の政策は必ず、より国家主義的となろう」「それぞれの国家利益に関する日米の考え方が必ず一致しているという確信は打ち崩された」。極東の種々の政治的変化は、日米にとってそれぞれ異なる重要性を持つが、「その現実は、既に世界三位となっている日本の防衛予算に反映されている。来世紀には日本の核開発も排除できない」。
いずれも何ら根拠が示されていない憶測に過ぎない。
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キッシンジャーは、(中共のアドバイザーであり)中共の存在をフリーハンドで認める一方、日本には復活を許さないポジションを選んでいる。
キッシンジャーが仮にロックフェラーの雇われ人だとすれば、日本の復活を許さないのは、ロックフェラーの意思とみることができる。
すなわち、ロックフェラーという、親日家の銀行家として紹介される人物が、実は、自らが日本の支配者となるべく、憲法を押し付け、天皇を象徴とし、神道を否定、日本を永久に?弱体化させる目的で日米安保を考案、さらに、永久に日本を復活させないことを念頭に入れ米中国交正常化を進め、キッシンジャーを代理人として戦後レジームの恒久維持を目指したと考えられるのである。
―― 参考情報 ――――――――――
デビッド・ロックフェラー氏死去 101歳、親日家の銀行家
https://www.nikkei.com/article/DGXLASGN21H0D_R20C17A3000000/
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これら数冊の本に書かれていることを総合すると、日米安保は、日本からみて、GHQ憲法以上の、(タタールのくびき並みの)難題として、キッシンジャー外交上、機能、存在していると考えるのである。
以上
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