今なぜ「賃上げ税制」なのか

高市政調会長、官房長官、財務大臣は賃上げ税制についてかく言及している。

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「(企業への)現預金に課税するかわりに、賃金を上げたらその分を免除する方法もある」 高市早苗氏、企業の現預金への課税を検討
http://blog.livedoor.jp/abechan_matome/archives/58589532.html

金融所得への課税 “賃上げへ税制強化など優先” 官房長官
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211011/k10013301851000.html


財務大臣記者会見 10月5日

問)岸田総理から大臣は新しい日本型資本主義や賃上げについての税制について検討するように指示を受けたということですが、その具体的な目標として岸田総理が総裁選で令和版所得倍増計画というのを掲げられていましたが、大臣としてこれについて何か指示を受けたり、もしくはお話がありましたでしょうか。

答)具体的な制度の中身にわたるような、そういうようなものはまだ明確には受けておりません。ただ、総理の今までの発言を聞いておりまして感じますことは、企業が内部留保も今かつてないほどたまっているわけですけれども、そうしたものが、企業が長期的な目線に立って、株主のみならず従業員、それから取引先にも配慮した経営を取り組んでいただくということが1つ重要なことではないのかなと、そういうふうに考えます。それに関連いたしましては、具体的な税制、例えば賃上げに積極的な企業への何か税制支援が必要なのかなと、これはわかりませんけれども、そういうようなことが議論になってきた場合は今後与党の税調などでの議論も踏まえて対応していくということで、今そういう話が出たばかりでございますので、具体的にどういう制度設計でいくのかということについては、これからの検討に委ねられると、こういうふうに理解しています。

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この時期での一連に発言は、来春の賃上げを望む有権者に配慮した選挙対策と受け取ることができる。


企業の内部留保がかつてないほどたまっているているという前提で、賃上げに積極的な企業に対する税制上の支援が必要との財務大臣発言に着目したい。


以下、視点を変えて論点整理を進める。


■直近で賃上げ税制はあったのか?

税制上は、平成30年後から取り組み開始されている。つまり、今回の政調会長、官房長官、財務大臣発言は一歩踏み込んだ措置と認識することができる。

―― 参考情報 ――――――――――

平成30年度創設 賃上げ・生産性向上のための税制 ご利用ガイドブック
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/syotokukakudaisokushin/pdf/chinagezeiseiguidbook20210426.pdf

人材確保等促進税制
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/syotokukakudaisokushin/syotokukakudai.html

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■他に賃上げ税制に相当する制度は存在しなかったのか?

平成14年に退職給与引当金制度が廃止となった。

―― 参考情報 ――――――――――

退職給与引当金とは?損益算入は廃止!具体例と計算方法
https://biz.moneyforward.com/accounting/basic/24759/

退職給与引当金制度が廃止されました。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/kaisei2002-1/01.htm

ご存知ですか? 退職給与引当金制度の廃止について
https://www.tokyochuokai.or.jp/topics/2003_3/haisi_tai_hikiate.html

退職給与引当金の廃止の退職金積立について
https://oshiete.goo.ne.jp/qa/456304.html

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廃止理由としては、以下の情報が参考となる。

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https://oshiete.goo.ne.jp/qa/456304.html
高額な退職金はわが国独自の制度で「金融ビッグバン」などによる外資系企業との競争に退職金が足かせになる可能性があるため、この制度を後押ししてきた「退職給与引当金」を廃止する理由らしいです。短期的には増税効果があります。

https://www.tokyochuokai.or.jp/topics/2003_3/haisi_tai_hikiate.html

 社会経済情勢の変化に伴い、退職金のみならず企業年金を含めた運用環境の悪化が、積み立て資産不足を発生させ、企業経営を圧迫している状況などから退職給与引当金制度や企業年金制度の見直しが検討された結果と考えられます。


https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/kaisei2002-1/01.htm

2 退職給与引当金制度が廃止されました。
《制度の概要》
 この制度は、法人のうち退職給与規程を定めているものが、使用人の退職により支給する退職給与に充てるため、期末に在職する使用人の全員が自己の都合により退職するものと仮定して計算した場合の退職給与の金額(以下「期末退職給与の要支給額」といいます。)として見積もられる金額のうちその事業年度において増加したと認められる部分の金額を基礎として計算した繰入限度額までの金額を損金経理により退職給与引当金勘定に繰り入れることができるというものです(旧法541)

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要するに、バブル崩壊後の円高により企業の体力が低下、金利の低下による運用環境の悪化、外資系企業との競争において高額な退職金が足かせになると判断し、「退職給与引当金制度」を廃止したのである。

政府は税制面で企業を支援したことになる。


■他に企業を税制上優遇した措置は何か?

消費税を増税した分法人税減税となったとの指摘がある。消費税収の78.1%が法人税減税の穴埋めに消えているのだそうだ。見事な相関関係にあるように見える。

―― 参考情報 ――――――――――

消費増税と法人税減税の関係
https://snow.tokyoonline.jp/%e6%b6%88%e8%b2%bb%e5%a2%97%e7%a8%8e%e3%81%a8%e6%b3%95%e4%ba%ba%e7%a8%8e%e6%b8%9b%e7%a8%8e%e3%81%ae%e9%96%a2%e4%bf%82/

消費税法人税.jpg

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「平成30年後から取り組み開始された賃上げ税制」は、タイミング的に赤旗記事を意識した可能性がある。

最近になって、万年野党は、消費税減税を主張し始めた。代替財源として法人税増税しなくてはならなくなることは経緯的に確定的。法人税増税すれば、資本は海外に移動する。


過去30年間、工場の海外移転が相次いだ。
さらに、法人税減税しなければ?、企業のタックスヘブンへの資本移動が加速しかねない状況にあった。

タックスヘブンへの資本移動を防ぐために、法人税減税が必要となったとの指摘を参考としたい。

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https://meetsmore.com/services/tax-accountant/media/50031

タックスヘイブンとは租税回避地のこと
タックスヘイブンとは租税回避地のことで、法人税や所得税などの税率がゼロもしくは極めて低い国・地域のことです。ちなみにタックスヘイブンの「ヘイブン」のつづりは「避難所」を意味する「haven」であり、「天国」を意味するheavenとは異なります。

タックスヘイブンについて明確な定義はないものの、法人税がゼロまたは税負担率が20%未満であることが多いです。経済がグローバル化し国境を越えた資本移動が当たり前になった結果、資本移動にともなって付加される税の引き下げ競争が生じました。

誤解されることも多いですが、タックスヘイブン自体は違法ではありません。しかし移動元の国や地域において、税収の減少などの弊害をもたらしているため問題視されることが多いのです。

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アベノミクスで景気が回復、雇用が改善、人手不足が指摘されるほどになった。企業は、税制面で優遇された他、景気回復もあり体力を取り戻しつつある。

つまり、「企業の内部留保がかつてないほどたまっている」とする財務大臣の見解は、景気回復、賃上げ可能な体力ある企業(特に、競争市場で生き残った企業)の存在が前提にあると考えられる。


簡単に言うと、庶民は消費税増税、再エネ賦課金、電気料金値上げ、健康保険料値上げなどでアップアップ状態。(法人税減税の恩恵など)内部留保をかつてないほどためこんできた国際競争力ある企業に対し、「企業の現預金に課税するかわりに、賃金を上げたらその分を免除する課税手法」 を通じて、「企業優先傾向が長く続いた税制」を一旦修正しようしていると考えられるのである。

以上

この記事へのコメント

  • Suica割

    https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2110/15/news040_2.html

    筋を曲げたように思わせずに、金融課税強化する手はある。
    例としてあげるなら、損失繰越をするなら25%、1年ごとに総合処理するなら、22.5%、一回の取引ごとに課税し、損失埋め合わせを認めないなら、20%として課税する方法もある。
    また、現行の税制は、認める代わりに、申請で旧制度と新制度の口座に分割し、旧制度口座は、新たな取引は停止し、売却や空売りの精算等で、中身が無くなり次第、新制度口座に統合する。
    なお、旧制度口座の損失埋め合わせに関しては、特例的に損失繰越を認める。
    いろいろとやり方はあるでしょうね。
    2021年10月16日 18:55
  • 市井の人



    >Suica割さん
    >
    >https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2110/15/news040_2.html
    >
    >筋を曲げたように思わせずに、金融課税強化する手はある。
    >例としてあげるなら、損失繰越をするなら25%、1年ごとに総合処理するなら、22.5%、一回の取引ごとに課税し、損失埋め合わせを認めないなら、20%として課税する方法もある。
    >また、現行の税制は、認める代わりに、申請で旧制度と新制度の口座に分割し、旧制度口座は、新たな取引は停止し、売却や空売りの精算等で、中身が無くなり次第、新制度口座に統合する。
    >なお、旧制度口座の損失埋め合わせに関しては、特例的に損失繰越を認める。
    >いろいろとやり方はあるでしょうね。

    繰り越し損失ですか。NISA枠と課税税率を組み合わせる方法があるのではないかと思います。
    岸田首相は、税率的に、金持ちは累進課税、庶民は現状並みにできる制度づくりを目指しているはず?なのですが、なぜかはっきりと言いません。
    2021年10月17日 07:34

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