そもそも「制度設計上の不備」があったのではないか

自由社の歴史教科書が検定一発不合格扱いとなったことについては、政治的に保守の人ならご存じのことと思う。

―― 参考情報 ――――――――――

新しい歴史教科書の検定不合格 職権濫用の文科省
https://www.zenkyokyo.net/%e6%95%99%e7%a7%91%e6%9b%b8%e5%95%8f%e9%a1%8c/2193
教科書検定.jpg

―――――――――――――――――


上記の杉原氏の寄稿に関して、論理的飛躍がありそうな箇所が少なくとも5カ所存在する。

||||| ここから引用開始 ||||||||||||||||||||

①これは明らかに権力濫用の検定と言わなければなりません。
②文科省は明らかにつくる会をつぶしにかかったといわなければなりません。
③もしつくる会なかりせば、今の教科書は依然として慰安婦は性奴隷だという記述でいっぱいだったでしょう。
④自虐史観が文科省の中に大挙して入り込み、教科書検定を通じて自虐史観を日本国民に刷り込もうとしているのです。
⑤文科省に入り込んだ自虐史観勢力との戦いであり、国家的、国民的決戦の戦いだということを銘記して、国民の大きな支持を得て戦わなければなりません。
⑥ITの発達した時代で、教科書は各教科書会社がPDF化して公開すれば、テマ、ヒマかけて教科書展示会など開く必要はありません。教科書展示会などはすでに廃止しておくべき制度です。家庭科では子育てについて教えるべきとか、公民では公共の精神をもっと教えるべきとか、文科省の教育政策にはいろいろと問題があります。

||||| ここまで引用 ||||||||||||||||||||||||


①について、合理的根拠はあるのか?
②、③、④、⑤について、客観的証拠はあるのか?
⑥は、本件とは無関係な話題であるため、削除すべきと考える。

官界が受入れざるを得ない根拠、証拠を示せていない気がする。よって、以上の5カ所については論理的飛躍があると判断せざるを得ない。

かく言いたい気持ちはわからぬではない。しかし、相手は中央省庁。私は、この団体関係者から、「文科省に対しては、命令調かつ問答無用かつ怒鳴ってでも対応する」という趣旨の対応をしてきたという話を聞いたことがある。
従って、一種の許認可案件となる教科書検定に際して、文科省側から相手にしたくない団体と思われているはずである。円満な教科書検定を期待するなら、文科省に対する従来からの喧嘩腰の対応をやめるという、マナー・作法上の改善が必要と指摘せざるを得ない。

官僚とて、全員が政治的に左翼と決まった訳ではない。中立的かつ公正に処理しようと思っていても、鼻っから売国奴と決めつけられ、上から目線で怒鳴り散らすような対応を続けられると、どうでもいいという趣旨の扱いをされる可能性が出てくるのである。

次に、裁判に持ち込んだ団体関係者の動画を参照したい。

―― 参考情報 ――――――――――

文科省「違法検定訴訟」第1回口頭弁論 原告側2名が意見陳述「訴訟しか道がなくなった」篠原寿一「組織的・計画的な犯行だ」藤岡信勝
https://www.youtube.com/watch?v=agMp5zn_9TE&t=581s

―――――――――――――――――


まず、指摘したいのは、見出しにおいて、「違法」、「組織的・計画的犯行」という言葉を使用している点である。

「違法」だと言うなら、どの法律のどの条文を指しているのか、明確にしなくてはならないが、この動画では法的根拠がはっきりしない。
「組織的・計画的犯行」だとしているが、これは犯罪なのか。だとすれば、刑事告発できる案件と認識するが、刑法のどの条項なのか、はっきりしない。

文科省に対し行政訴訟を提起し勝訴したいなら、第三者がどう評価するか考えるべきだ。中立的立場で裁判を眺めている人が少なからずいるはずである。

本当に違法なのか。本当に犯行と言えるのか。
少なくとも、立派な学歴、職歴を有する方が、使うべき言葉とは思えない。違法であり犯罪であるとするなら、東京地検に告発状を提出すべきことである。実態的にはそうは思えない。

教科書検定、一発不合格にという結果に至った原因はどこにあるのか。上記動画を2度視聴、分析結果を以下に述べさせていただく。


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①文科省が教科書調査官や審議会委員など、外部の人材に教科書検定の実務(検定意見、審査等)丸投げしてきた?問題
②教科書調査官の選考過程の不備(事前に思想調査等徹底していない?)
③前回検定結果を尊重しない教科書調査官の問題(検定の継続性をどうみるか)
④複数の教科書について横断的な審査調整機能の不備
⑤差別的な教科書検定を防止するための対策不備
⑥検定意見表明段階で判明した、偏向教科書調査官について、処分、解雇の手順が明確でない
⑦調査官の審査対応が独善的だった場合の合理的救済処置の不備(第三者による審査制度はなくていいのか)
⑧(事後を含め)文科省が教科書調査官の責任追及する機会が存在しない?問題
⑨教科書検定上の制度設計上の不備に関する文科省側の責任の所在が曖昧となっている問題(教科書課長の責任?)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


皆様は、どういう印象を持たれたであろうか。

これらは、上記動画から、自由社の教科書検定に際して起きたことを、箇条書きで纏めたものである。ほとんどが、個々の手順、対応等の不備に分類される。すなわち、制度設計上の不備なのである。

直感となるが、文科省における、教科書検定上の制度設計、特に教科書調査官の選考、偏向検定意見表明段階での途中解雇手続き、偏向調査官の処分手続き等に不備があり、教科書調査官が独断で暴走しやすい検定手続き状況にあったのではないか。

同様のことは審議会委員の選定についても言えるかもしれない。
(偏向)教科書調査官と(偏向)審議会委員がグルになれば、教科書検定など何とでもなりそうな気がする。

教科書関係法令等すべて読んだ訳ではないが、以上の分析結果を集約すると、少なくとも「違法」とか「犯行」であると断言できる状況にはない。

上記動画では「違法」とする法の条文を示してはいない。仮に違法行為の主犯が教科書調査官だったとして、教科書調査官の職務規定、業務マニュアル等において、違法行為に関する規定は存在していることを確認しているとは思えない。

冒頭で紹介した記事の見出しは、「職権濫用」だとしているが、これは担当した教科書調査官個人の視点で眺めると「職権濫用状態の暴走審査」となるが、総括した文科省に対する認識としては、その検定審査を調査官や審議会丸投げ?してきた文科省の怠慢と制度設計の不備として集約することが可能と思う。


私は訴訟という手法を否定しているのではない。ただ、手順として、大臣宛てに公開質問状を提出する前に、制度設計上の不備について気がつくべきだった。
制度設計上の不備というテーマで文科省大臣に陳情する手順があったのではないか。


今回の検定以前から、今回の訴訟に至った経過において、文科省と当該団体の間に「何かあった」と考えざるを得ない。
文科省側において、過去の事案から、当該団体に対し、仕返ししたい動機?があったとみられるのである。


最終的に、文科省の責任追及可能な案件である。

と考えると、検定一発不合格は、
経緯的に法改正等、よく調べもせず、許認可対応上の作法等をわきまえず?、上から目線で突っ張っしてきた?ことが積もり重なり、
「外部人材丸投げ?の検定実態、偏向?教科書調査官に関する処分・解雇等の手続き上の不備の状況で、直近の法改正、文科省内の意思決定手順、教科書界の内情を熟知した(偏向)教科書調査官」が満を持して採用となり、(偏向)審議会委員と連携するなど、起こるべくして起きたと解するのである。


もちろん、裁判で確実に勝訴し、文科省の対応を改めさせるには、当該検定を所管した文科省課長、教科書調査官の出廷が必須となるように思う。

以上


この記事へのコメント

  • Suica割

    私が歴史教科書の審議官だとして、小学生用教科書の場合、ロンドン海軍軍縮条約での補助艦艇比率を検定を受ける教科書が、日:米:英で6.975:10:10としていた場合、本当は、そこまで小学生に覚えることを要求するのは酷だから、日本の割合は7にしてくれと修正意見を言いたいとする。
    ここからは、実際の運用基準を知らないので、想像で語る。
    ○か☓かで言わなくてはならないという制度なら、☓にするしかない。客観性、正確性に問題ないが、使用者の発達段階には合わない記述は、トータルでの検定の合否の決定には、関係させないが、修正をさせる要件程度ならいいが、トータルでの合否に関わる規定であれば、問題はある。
    審議官はきちんとやっても、制度の問題で偏向思考の持ち主にされるケースなのに、権力乱用扱いされるのはさすがに同情する。
    裁判しても、勝てる見込みは低いと思います。
    作る会も審査官も内容は正しい。
    だが、審査官の意見の方がトータルでは説得力が高い。
    その上、制度的に問題となる行為は認定できないので、無罪。
    そういう展開を予想しますね。
    2021年11月27日 14:33
  • Suica割

    いくら、記述の正確性や客観性で作る側が勝っても、児童生徒への適応性の観点でそれなりの正確性と客観性を担保して、まあありだろうという記述が正しいという基準からみたら、作る会の記述は、正しいけど、児童生徒にはちょっと詳しすぎて負担が重いから、ダメだろうと審議官が判断したら勝てないだろうというのが私の考えです。
    それが、作る会も審査官も正しいけれど、作る会は勝てないという意味です。
    2021年11月27日 22:07
  • 市井の人



    >Suica割さん
    >
    >私が歴史教科書の審議官だとして、小学生用教科書の場合、ロンドン海軍軍縮条約での補助艦艇比率を検定を受ける教科書が、日:米:英で6.975:10:10としていた場合、本当は、そこまで小学生に覚えることを要求するのは酷だから、日本の割合は7にしてくれと修正意見を言いたいとする。
    >ここからは、実際の運用基準を知らないので、想像で語る。
    >○か☓かで言わなくてはならないという制度なら、☓にするしかない。客観性、正確性に問題ないが、使用者の発達段階には合わない記述は、トータルでの検定の合否の決定には、関係させないが、修正をさせる要件程度ならいいが、トータルでの合否に関わる規定であれば、問題はある。
    >審議官はきちんとやっても、制度の問題で偏向思考の持ち主にされるケースなのに、権力乱用扱いされるのはさすがに同情する。
    >裁判しても、勝てる見込みは低いと思います。
    >作る会も審査官も内容は正しい。
    >だが、審査官の意見の方がトータルでは説得力が高い。
    >その上、制度的に問題となる行為は認定できないので、無罪。
    >そういう展開を予想しますね。
    >

    政府側を犯罪者扱いしておいて、制度上は未整備な点が多発している状況で、勝訴は難しそうな気がします。
    裁判所もお役所という意味もあります。
    2021年11月28日 08:52
  • 市井の人



    >Suica割さん
    >
    >いくら、記述の正確性や客観性で作る側が勝っても、児童生徒への適応性の観点でそれなりの正確性と客観性を担保して、まあありだろうという記述が正しいという基準からみたら、作る会の記述は、正しいけど、児童生徒にはちょっと詳しすぎて負担が重いから、ダメだろうと審議官が判断したら勝てないだろうというのが私の考えです。
    >それが、作る会も審査官も正しいけれど、作る会は勝てないという意味です。


    自分たちは保守であり愛国である点で正しいんだという価値観だけで裁判の臨もうとしているように見えます。法律を読み、法律解釈を事前にしておき、法改正があればきちんとパブリックコメントに別動隊が参加する、そういう対応を怠り、制度設計的に不備な土俵でどちら側からみても一方が正しいと言えそうもない仔細の事項について、裁判までして争って、得るものはあるのかと思います。
    NHK放送法違反に係わる訴訟と似たような結末となりそうですね。
    2021年11月28日 08:57
  • Suica割

    そもそも作る会は致命的なミス。ニュアンスや表現を失敗しているのでは?という点があると思います。
    私の曖昧な記憶では、ブログ主様の記事で挙げられていましたが、作る会は、日本国憲法の3大原則である、平和主義、基本的人権の尊重、主権在民の代わりに、○○大原則を挙げて列挙していました。
    審議官の立場としたら、一つひとつは間違ってなくとも、他の教科書との相違が大きい時点でちょっと待ってくれという意見になります。
    3大原則のあとに、他にもという形で記述されるなら認めてもという気持ちになります。
    他にも、事後法の禁止や罪刑法定主義等の重要な原則が憲法には書いてます。
    それならば、審議官もまあ、いいでしょう。となります。
    私がロンドン海軍軍縮条約の補助艦艇について何か言った審議官の立場としても、些末な数値の違いでなく、日本国憲法の大まかな仕組みの多少詳しい解説で全体的な枠組みの説明であるから、小学生に伝えても差し支えないとするでしょう。
    大学受験や高校受験、更には中学受験、公務員採用試験等の内容まで関わり、人生を左右することを考えると、他とは、基本的な部分で乖離が大きすぎるものを出すわけにはいかない。
    そこまで気を回せなかった作る会のミスは大きいと思います。
    2021年11月28日 17:54
  • 市井の人



    >Suica割さん
    >
    >そもそも作る会は致命的なミス。ニュアンスや表現を失敗しているのでは?という点があると思います。
    >私の曖昧な記憶では、ブログ主様の記事で挙げられていましたが、作る会は、日本国憲法の3大原則である、平和主義、基本的人権の尊重、主権在民の代わりに、○○大原則を挙げて列挙していました。
    >審議官の立場としたら、一つひとつは間違ってなくとも、他の教科書との相違が大きい時点でちょっと待ってくれという意見になります。
    >3大原則のあとに、他にもという形で記述されるなら認めてもという気持ちになります。
    >他にも、事後法の禁止や罪刑法定主義等の重要な原則が憲法には書いてます。
    >それならば、審議官もまあ、いいでしょう。となります。
    >私がロンドン海軍軍縮条約の補助艦艇について何か言った審議官の立場としても、些末な数値の違いでなく、日本国憲法の大まかな仕組みの多少詳しい解説で全体的な枠組みの説明であるから、小学生に伝えても差し支えないとするでしょう。
    >大学受験や高校受験、更には中学受験、公務員採用試験等の内容まで関わり、人生を左右することを考えると、他とは、基本的な部分で乖離が大きすぎるものを出すわけにはいかない。
    >そこまで気を回せなかった作る会のミスは大きいと思います。

    そのとおりと思います。
    愛国であれば、保守であれば、すべて正しいという前提のもとで、突っ走ってきて、結局普通の教科書としての道理よりもイデオロギー優先とみられたことに、当事者たちは気がついていないと思われます。
    一発不合格システムは、仔細なことに異常にこだわる教科書会社対策として編み出されたものかもしれません。
    2021年11月29日 12:36
  • Suica割

    私は作る会に対して、いろいろと書きましたが、作る会自体の狙いは高く評価してます。
    在特会の栄光ゼミナールに対する自虐史観歴史教育反対デモなんかより、高く評価してます。
    正確にいうと、視点の高さで勝負になっていないとまで思ってます。
    偏向歴史教育を何故、進学塾がやるのか?
    それは、進学塾の目的が進学校への受講生の合格を目指しているから。進学校が偏向歴史教育を行い、それに準拠した入試問題を出すから、それに正解するためには、偏向歴史教育を行うことが一番の近道であるから。
    何故、進学校が偏向歴史教育をするのか?
    それは、教科書が偏向しているから。
    それを改めれば、上から全てが変わっていく。
    一事業者を糾弾していた在特会の何倍も本質的かつ、有意義な活動と思ってます。
    故に歯がゆく感じます。
    2021年11月29日 20:19
  • 市井の人



    >Suica割さん
    >
    >私は作る会に対して、いろいろと書きましたが、作る会自体の狙いは高く評価してます。
    >在特会の栄光ゼミナールに対する自虐史観歴史教育反対デモなんかより、高く評価してます。
    >正確にいうと、視点の高さで勝負になっていないとまで思ってます。
    >偏向歴史教育を何故、進学塾がやるのか?
    >それは、進学塾の目的が進学校への受講生の合格を目指しているから。進学校が偏向歴史教育を行い、それに準拠した入試問題を出すから、それに正解するためには、偏向歴史教育を行うことが一番の近道であるから。
    >何故、進学校が偏向歴史教育をするのか?
    >それは、教科書が偏向しているから。
    >それを改めれば、上から全てが変わっていく。
    >一事業者を糾弾していた在特会の何倍も本質的かつ、有意義な活動と思ってます。
    >故に歯がゆく感じます。
    >


    志(ビジョン)は素晴らしくても、目標設定、年度計画的なところ、法律を熟知したうえでの対応など、つめの甘さがあるように思います。発足時(原点)に遡るということです。

    つくる会発足時点で起きたこと  「渡部昇一の少年日本史」刊行の意味
    ttp://gendaishi.jugem.jp/?eid=396
    2021年11月30日 12:53

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