▽▽▽ 引用開始 ▽▽▽
RPE Journal==============================================
ロシア政治経済ジャーナルNo.2354
2022/6/19
=======================================================
★プーチン【戦術的勝利】でも【戦略的敗北】は【不可避】とはどういう意味ですか?
全世界のRPE読者の皆様、こんにちは!
北野です。
私は、ロシア軍がウクライナに侵攻する前から、同じことを書きつづけています。
「ロシア軍は、ウクライナでの戦闘に勝つかもしれないし、負けるかもしれない。
たとえ戦闘に勝っても、地獄の制裁はつづいていくので、ロシア経済はボロボロになっていく。
プーチンの【戦略的敗北】は【不可避】だ」
たとえば、ウクライナ侵攻の8日前(2月16日)に出た現代ビジネスの見出しは、
<全ロシア将校協会が「プーチン辞任」を要求…!
キエフ制圧でも【 戦略的敗北は避けられない 】>
です。
これについて「戦略的敗北とはどういう意味ですか?」とよく質問されます。
たとえば2014年3月、ロシアは、ウクライナからクリミアをサクッと奪いました。
ほぼ無血です。
これは、プーチンにとって、あざやかな【戦術的勝利】でした。
ところがその結果、欧米日から、経済制裁を科された。
その結果、ロシア経済は、まったく成長しなくなったのです。
プーチンの1期目2期目、つまり2000年から08年まで、
ロシアは、年平均7%の成長をつづける急成長国家でした。
当時プーチンは、「ルーブルを世界通貨にする!」と増長していたのです。
ところがクリミアを併合した2014年から2020年まで、ロシアのGDP成長率は、たったの0.38%になった。
これが【 戦略的敗北 】の意味です。
こういっても、あまり理解されないので、もう少し詳しくお話しましょう。
▼大戦略、軍事戦略、作戦、戦術
神が日本に遣わした「再臨の諸葛孔明」といえば、世界有数の戦略家、地政学者奥山真司先生です。
奥山先生は、なんと「世界一の戦略家」エドワード・ルトワックと温泉に行き、世界の未来を語り合える仲なのです。
そんな奥山先生は、「戦略の階層」という話をずっとされています。
戦略の階層はピラミッド型になっている。
上から、
・世界観
・政策
・大戦略
・軍事戦略
・作戦
・戦術
・技術
と7つの階層になっています。
これだけ見てもよくわかりませんね。
たとえば、日露戦争のことを考えてみましょう。
「日露戦争で、どうやってロシア軍に勝とうか?」
これは、軍事戦略です。
ところが、日露戦争にも、
・黄海会戦
・遼陽会戦
・旅順の戦い
・奉天会戦
・日本海海戦
など、いろいろな戦いがあります。
たとえば、「日本海海戦でどうやってロシア軍に勝とうか?」と考える。
これは、「作戦」レベルの話です。
そして、個々の戦闘で「どう勝とうか」というのは「戦術」レベルです。
さらに、「兵器の強さ」「兵士の強さ」などは「技術」レベル。
たとえば、ウクライナ戦争では、
「軍事用ドローン」や「携帯式対戦車ミサイル・ジャベリン」「携帯式地対空ミサイル・スティンガー」などが活躍していますが、これは「技術レベル」の話。
ここまでは、ご理解いただけたでしょう。
では、「大戦略レベル」とは何でしょうか?
軍事戦略は基本、軍隊の話です。
しかし、大戦略になると、政治、外交、経済などもかかわってきます。
日露戦争なら、
「同盟国イギリス、そしてアメリカと組んでロシアと戦う」のが、基本的な大戦略になります。
そして、「軍資金は、イギリス、アメリカから調達する」というのも、大戦略の一環でしょう。
では、一番上の「世界観」とは何でしょうか?
たとえば、キリスト教徒の人たちは、
「アダムとイブが創造主に逆らって堕落し、原罪を背負った。
しかし、救世主イエス・キリストが現れ救いの道を開いてくださった」という「世界観」を持っています。
共産主義者の人たちは、
「私有財産がうまれたことで、貧富の差がうまれ、貧富の差がうまれたことで階級がうまれた。
人類歴史は、階級闘争の歴史だ。
そして、階級闘争の最終段階で、労働者は資本家を打倒し、万人平等の豊かな世界を創る」という「世界観」を持っています。
たとえば、バイデンの世界観は、「民主主義」です。
一方、プーチンの世界観は、「民族主義」です。
バイデンは、ロシアーウクライナ戦争を、「善の自由民主主義勢力 対悪の独裁者の戦い」と位置づけている。
それで、ウクライナを支援する国は多く、ロシアを支援する国は少ないのです。
ロシア支持を明言している国は、北朝鮮、ベラルーシ、シリア、エリトリアしかいません。
中国やインドは、正常な貿易関係をつづけていますが、立場は「中立」です。
プーチンの建前は、「ロシアの利益」です。
一方ゼレンスキーの建前は、
「世界の自由と民主主義を守っている」
です。
どっちが支持を得られるかは明らかでしょう。
プーチンは、「世界観レベル」でゼレンスキーに負けているのです。
では、2番目の「政策」とは何でしょうか?
たとえば、「民主主義」とは、「国民に主権がある」という意味です。
独裁国家が民主主義に移行するためには、何が必要でしょうか?
・自由で公正な普通選挙
・言論の自由
・信教の自由
・結社の自由
などが必要でしょう。
ところで、言論の自由は「世界観」ではないですね。
「民主主義」という世界観を実現するための「政策」です。
というわけで、私なりに、
世界観、政策、大戦略、軍事戦略、作戦、戦術、技術
についてお話させていただきました。
はっきりいえば、
プーチンは【 戦術的大統領 】です。
それで、進めば進むほど孤立して厳しくなっていく。
ナポレオンやヒトラーと同じタイプの指導者でしょう。
こんな視点からも、プーチンの長期的敗北は不可避なのです。
△△△ 引用終了 △△△