有能過ぎる人の弱点

偏差値的に上位にあるからと言って、仕事上有能とは限らない。
職場によっては東大卒を持て余すケースもある。東大卒で閑職に追いやられた先輩社員を何人か知っている。

この場合の「仕事において」とは、創造力が試される仕事のことを指す。誰もしたことがない前例のない仕事、未経験の分野を切り拓くことなどを指す。

持て囃されているほど、立案・企画業務を得意としている人は少ない。
実感として湧かないかもしれないが、保守系言論雑誌における、寄稿者による提言が皆無であることが参考となる。

提言力という点で、中川八洋は別格である。中川八洋が徹底批判する、西尾幹二は提言部分がまるでない。「……についての提言」というタイトルにして、箇条書きにして書けば、形式上は提言書らしくなるのに、そういう工夫もない。西洋哲学専門であるにしては、政治的に論理的でない文体中心の、陳情書を書いたことがない人の文体だらけのように見える。


西尾幹二の「首相批判」を否定しているのではない。有名人なのであるから、(私よりも)しようと思えば首相に直接会い話しできる立場にあるのだから、会った際に提言書を渡せば済むことだらけのように見えて仕方がないのである。
また、問題提起、批判程度のことは誰でもできる次元のことである。


さて、「絶望の裁判所」を書いた瀬木比呂志は、偏差値的には同世代のトップレベルの人材である。
高校の先輩で国立大学の有名教官になられた日本のトップレベルの頭脳の持ち主の方がいた。この方は、高校時代から、脳味噌の出来が違った。普通の秀才よりもさらにワンランク上の頭脳だと言われていた。文系志望だったが、数学、物理、化学も得意だったようだった。高校2年生と3年生が一緒に受ける高校主催の模擬テストで2年生当時から3年生をごぼう抜きにするほどの秀才として校内では知られていた。

案の上、東大に現役で合格。

瀬木比呂志も似たような受験時代だったのではないか。答えが一つ、用意された選択肢の中から模範解答を見つけることは優れていたように思う。

しかし、視野を広げ、国家レベルの次元で構想することについては今一つ。「絶望の裁判所」という本は、最高裁を中心とする問題抽出部分は、裁判官個体の問題指摘含めて十分過ぎるほどの内容である。ビジネス書編集者的視点で言うと、内容的にあの三分の一に圧縮できるはずである。無駄な文章が目立つのである。

この場合の無駄な文章とは、客観的でなくやや主観的、感情的になって書きなぐっている、内容的に重複していることなどを指す。「絶望の裁判所」の書評上の評価が今一つな理由はここにある。

具体的な提言が見当たらない、提言レベルの書きぶりになっていないのである。

そこで、読後感から私個人が受入れられやすく、著者が意図していると思われる事項などを加味し、以下に提言を試みることにした。

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「絶望の裁判所」にて提言頂きたかったこと(箇条書き)

・最高裁事務総局から人事管理機能を分離、人事院内の内部組織とするか、第二人事院を新設

・裁判官弾劾組織として、裁判官訴追委員会の他に、内閣の下部組織として、内閣人事局と同格の組織を新設(地裁、高裁の裁判官等、随時弾劾可能な組織を新設)

・弁護士法改正(外国籍弁護士、帰化弁護士についての規制強化、スパイ弁護士対策)

・行政組織内に、弁護士懲戒請求手続きを行う組織を新設(現状は、懲戒請求者個人情報が懲戒請求対象弁護士に情報漏洩している問題がある、余命事案が該当)

・最高裁等、65歳以上の定年退職者の退職金について、65歳ベースで打ち止め(飛びぬけた高額退職金実態を是正)

・裁判官の定年退職後の天下りを制限(企業が募集する採用情報に基づく就職は制限しない)

・退職間際のトンデモ判決に関する抑止策導入(弾劾処分相当の判決だった場合、退職金等減額措置の導入)

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著者の不満が、最高裁事務総局が握る人事権に起因していると考え、組織デザインで対処できるのではないかと考えるのである。こうすることにより、組織上、最高裁長官一派による露骨な人事権等行使しにくくなるはずである。

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