懲戒処分事案 地方公務員の場合

現在手がけている自治体許認可に関して、事前に文書で確認すれば問題とはならなかったのに、確認せず認可し、後に問題となったケースがある。


「道路行政失敗の本質」(杉田聡)では、官僚の不作為に二種類あると定義している。

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官僚による「不作為」には、二つのタイプがある。
一つには、行政官としての政策実施(作為)に伴う結果責任を自覚せずに、多様な被害を自ら生んでいるにもかかわらず、それを放置するという「不作為」である。

また一つには、企業が行なう営利追求活動等に伴って発生する諸問題に対して、監督官庁として規制も指導もなさずに、問題をそのまま放置するという「不作為」もある。一定の対応をしつつも結局それを中途半端に終わらせて、問題を放置するという「不作為」もある。

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今回、係わっている事案は、上記どちらにも該当する。

横浜市の懲戒処分の標準例という文書が存在する。


横浜市懲戒処分の標準例
https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/saiyo-jinji/jinji/hyoujunrei.html


文書の取扱いに関し、虚偽報告、不適切な取扱い、不適切な事務処理が懲戒処分に該当するとされる。

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https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/saiyo-jinji/jinji/hyoujunrei.html

シ 虚偽報告
 事実をねつ造して虚偽の報告を行った職員は、減給又は戒告とする。

ス 公文書の不適正な取扱い
(ア)公文書を偽造し、若しくは変造し、若しくは虚偽の公文書を作成し、又は公文書を毀棄した職員は、免職又は停職とする。
(イ)決裁文書を改ざんした職員は、免職又は停職とする。
(ウ)公文書を改ざんし、紛失し、又は誤って廃棄し、その他不適正に取り扱ったことにより、公務の運営に重大な支障を生じさせた職員は、停職、減給又は戒告とする。

ケ 不適切な事務処理
 故意又は重大な過失により適切な事務処理を怠り、又は虚偽の事務処理を行い、公務の運営に支障を生じさせた職員は、停職、減給又は戒告とする。
 この場合において、これを知りながら容認した職員は、停職、減給又は戒告とする。

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さて、地方公務員法では、服務的に遵守すべき事項が定められている。


地方公務員法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC0000000261


取り掛かっている事案については、以下の条項が該当しそうである。

第三十条 すべて職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し
第三十二条 職員は、その職務を遂行するに当つて、法令、条例、地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程に従い
第三十三条 職員は、その職の信用を傷つけ、又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない
第二十九条 二 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合

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https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC0000000261

(服務の根本基準)
第三十条 すべて職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。

(法令等及び上司の職務上の命令に従う義務)
第三十二条 職員は、その職務を遂行するに当つて、法令、条例、地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程に従い、且つ、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。
(信用失墜行為の禁止)
第三十三条 職員は、その職の信用を傷つけ、又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。

(懲戒)
第二十九条 職員が次の各号の一に該当する場合においては、これに対し懲戒処分として戒告、減給、停職又は免職の処分をすることができる。
一 この法律若しくは第五十七条に規定する特例を定めた法律又はこれに基く条例、地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程に違反した場合
二 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合
三 全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合
2 職員が、任命権者の要請に応じ当該地方公共団体の特別職に属する地方公務員、他の地方公共団体若しくは特定地方独立行政法人の地方公務員、国家公務員又は地方公社(地方住宅供給公社、地方道路公社及び土地開発公社をいう。)その他その業務が地方公共団体若しくは国の事務若しくは事業と密接な関連を有する法人のうち条例で定めるものに使用される者(以下この項において「特別職地方公務員等」という。)となるため退職し、引き続き特別職地方公務員等として在職した後、引き続いて当該退職を前提として職員として採用された場合(一の特別職地方公務員等として在職した後、引き続き一以上の特別職地方公務員等として在職し、引き続いて当該退職を前提として職員として採用された場合を含む。)において、当該退職までの引き続く職員としての在職期間(当該退職前に同様の退職(以下この項において「先の退職」という。)、特別職地方公務員等としての在職及び職員としての採用がある場合には、当該先の退職までの引き続く職員としての在職期間を含む。次項において「要請に応じた退職前の在職期間」という。)中に前項各号のいずれかに該当したときは、これに対し同項に規定する懲戒処分を行うことができる。
3 職員が、第二十八条の四第一項又は第二十八条の五第一項の規定により採用された場合において、定年退職者等となつた日までの引き続く職員としての在職期間(要請に応じた退職前の在職期間を含む。)又はこれらの規定によりかつて採用されて職員として在職していた期間中に第一項各号の一に該当したときは、これに対し同項に規定する懲戒処分を行うことができる。
4 職員の懲戒の手続及び効果は、法律に特別の定がある場合を除く外、条例で定めなければならない。

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どう活用するのか。

戦術的にはこうなる。
要望書を提出し、何ら措置せず放置した場合、不作為を根拠として、上記懲戒処分に該当することを別途通知するのである。


国政マターとなるが、書類不備で世界遺産登録が頓挫したケースがある。


佐渡金山の書類不備は2月に指摘、世界遺産登録へ「大失態」 自民で批判続出
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自民・高市氏、政府の書類不備に「怒り心頭だ」 佐渡金山の世界遺産登録めぐり
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たかが書類一つのことだが、横浜市の懲戒処分の標準例を参考にすると、上述の文書不備の件は、「不適切な事務処理」に該当する可能性がある。

本稿は地方公務員の懲戒処分を扱った。文化庁職員は国家公務員であるが、地方公務員と同様の義務規定が存在すると考えると、自民党外交部会は、当該文科省幹部懲戒処分という手段があることに気づくべきだろう。


以上

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