アメリカがイスラエルを支持する理由

イスラエルではネタニヤフが復権。


イスラエル ネタニヤフ元首相組閣 パレスチナに最も強硬政権か
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221114/k10013890211000.html

イスラエル総選挙、ネタニヤフ元首相が返り咲きへ 極右の支援受け
https://www.bbc.com/japanese/63494711


一部のヨーロッパの国において、マスコミは極右政権とレッテル貼りしているが、(正確には)保守系右派政権が次々と誕生しつつある。
その流れはアメリカでも起きている。中間選挙で圧倒的勝利は得られなかったが、次期大統領選挙、次期上院選挙にて、共和党候補が大統領となり上院で過半数の議席を獲得する勢いにある。

トランプ政権がそうであったように、宗教的動機を持ってアメリカとイスラエルの強固な外交関係が復活することになる。

なぜ、アメリカがそこまでするのか。日本人的感覚では理解し難い。
「アメリカを動かす宗教ナショナリズム」(松本佐保)から、まず、キリスト教徒がイスラエルを支持する5つの理由について、引用・紹介させていただく。


▽▽▽ 引用開始 ▽▽▽

キリスト教徒がイスラエルを支持する理由は五つあり、①イスラエルは神によって与えられた唯一の国、②キリスト教の母体はユダヤ教、③イエスはユダヤの王として礫刑に処せられ、④イスラエルを支持するクリスチャンには神から祝福がある、⑤ユダヤ人を虐待するクリチャンには神の裁きが下るというものである。

狂信的にも見える聖書への原理主義的な解釈であるが、ヘイギーが設立したCUFIが連邦議会などのワシントンの政界と太いつながりを持ち、彼がアメリカ最大のイスラエル・ロビー、「アメリカ・イスラエル広報委員会(AIPAC)に招かれ、二〇一二~一三年に「キリスト教シオニストが目覚めて、五〇〇〇万人のクリスチャンがイスラエルのために立ち上がるであろう」と演説している。

実際、アメリカの対イスラエル政策を決定する上で同組織が多大な影響力があることは、トランプ政権を含む歴代の共和党政権の対中東政策を見てもよく分かる。

△△△ 引用終了 △△△


ただ、これだけ読んでも経緯情報不足のため理解不可能。

そこで、上記の記述の前半部分も引用させていただく。興味ある方、お読みいただきたい。


▽▽▽ 引用開始 ▽▽▽

宗教的なキリスト教シオニズムとは、第一章でも述べた一七世紀のイギリスのピューリタンの思想から出てきた終末論のひとつである千年王国論が期限となる。ヨハネの目次六二〇章で、悪魔と戦い最終的に勝利したキリストは、起源一〇〇〇年頃に最後の行うと書かれている。千年王国論とは、その前に悔い改めれば救われて天国に行けるという救済神学である。

ここから、週末が来る前に、古代イスラエル王国が存在したパレスティナの地にユダヤ人が帰還できるようにイギリスが支援することで、キリスト教世界が完成するというディスペンセーションナリズム(天啓史論)が誕生した。唱えたのは、一九世紀のイギリス統治下のアイルランドで活躍したジョン・ダービー牧師だった。

人間が神によって最終的に救われるプロセスは、聖書にある神と人間との契約に基づいて七段階に区分され、最終段階の「御国の時代」では、キリストの再臨によって、神の王国がダビデに約束された土地=イスラエルを取り戻し、この地に建設されると説いている。

つまり旧約聖書に登場する古代イスラエルの王でありユダヤ教の神ダビデをキリスト教徒も信じるので、逆にキリスト教徒のみが救い主(メシア)とみなすキリストをユダヤ教徒も信ずるべきであるという、ユダヤ教とキリスト教の折衷信仰である。これを信じるとキリスト教徒もユダヤ教徒も最終的に救われて天国に行けるが、その地はエルサレムでなくてはならないと主張する。

このディスペンセーショナリズムの聖書解釈によるカルヴァン主義と敬虔主義の折衷の神学がキリスト教シオニズムとしてイギリスではジョン・ダービーやアントニー・アシリュー・クーパーに受け継がれ、スコットランドやアイルランドを経て、イギリスの植民地やアメリカ合衆国にもたらされ、現在に至るまで独自の発展を遂げる。

すなわちキリスト教シオニズムの思想は、戦間期から戦後にかけて世界の覇権がイギリスからアメリカに移ると共に、アメリカに伝播したと言えるだろう。

中略

そして、ディスペンセーション主義を生み出したジョン・ダービーを師として、キリスト教シオニズムを神学論ではなく、アメリカの政治政策に転換しようとしたのが
ウイリアム・ブラックストンである。

シカゴで不動産によって財を成し、その財力で政治家に働きかけ、ユダヤ人及びキリスト教徒のパレスティナ帰還を訴えた。彼の一八七八年著作はベストセラーとなり、一八九〇年にはキリスト教徒とユダヤ教の指導者に呼びかけて「イスラエルの過去・現在・未来」という会合を組織し、キリスト教シオニズムを国際的な運動とすることを国務長官や大統領への嘆願書の中で訴えた。

中略

ディスペンセーション主義はキリスト教原理主義的な傾向にあることから、アメリカの保守的福音派に浸透する。旧約聖書のユダヤ人の出エジプト記とカナンの地(約束の地)の征服が、アメリカの建国とその膨張主義的なイデオロギーとも結びついた。

同様の聖書解釈は、テキサス州ダラスの会衆派教会の牧師、サンラス・インガス・スコフィールドが一九〇九年に『スコフィールド注釈付き聖書』を出版すると、一〇年間で一〇〇万部売れ大ベストセラーになり、本書は聖書解釈マニュアルとして伝道師の間に広まり、特に南部の福音派に浸透する。全箇所に注釈が付いたこの聖書では、特にヨハネの黙示録の箇所に、最後の審判から救済に至る終末論のタイム・テーブルを含む詳細な解説が付いている。

キリスト教シオニズムの拡大とアメリカ政治への影響力

外交的には第四次大覚醒(一九六〇~七〇年代)と、イスラエルがアラブ諸国に勝利した第三次中東戦争の時期が被ったことで、キリスト教シオニズムに拍車がかかったとされる。

一九六七年六月五日から六月一〇日の六日戦争によってイスラエルは、エルサレム、ヨルダン川西側、ガザ、ゴラン高原、シナイ半島を管理下に置くこととなった。敵であるアラブ諸国に包囲されながら、小国イスラエルの本戦闘での勝利は神の奇跡であり、聖書の予言を実行し、ユダヤ人国家イスラエルは土地をさらに拡大すべきであるという考えが、アメリカの福音派の間で高まったいくのである。

プロテスタントの福音主義者たちは、イスラエル支援のための資金援助を行い、イスラエルの聖地エルサレムを訪問するなど、福音派のキリスト教巡礼の旅を組織するようになった。

テキサス州にあるメガ・チャーチの一つ、聖アントニオのコーナーストーン教会の牧師、ジョン・ヘイギーはキリスト教右派からキリスト教シオニストとなり、八一年から始めた「イスラエルに敬意を払う夕べ」という組織は、やがて二〇〇六年に「イスラエルのために団結するクリスチャン(CUFI)へ発展した。「モラル・マジョリティ」の設立者ジェフリー・ファルウェルや、「クリスチャン連合」のパット・ロバートソンなど、類似の宗教への組織力が見られる。

ヘイギーのキリスト教シオニズムは宗教に留まらず、パレスティナのイスラム・テロリストとの徹底抗戦、イランの核開発の阻止への武力投入など、アメリカの中東への軍事介入を奨励していた。聖書のゼカリヤ書の第一三章八節を引用し、ハルマゲドンの戦いの末、三分の二のユダヤ人が死亡、生き残った三分の一がキリスト教に改宗するだろうと主張している。

△△△ 引用終了 △△△

読みながら思う事だが、宗教ナショナリズムであるがゆえに、政治的には妥協を許さない強硬派路線であり、政治と密接な係わりがある限り、好戦的な安全保障政策を採用することになる。

アメリカが情け容赦ない好戦的国家であるのは、建国以来、このキリスト教ナショナリズムが影響していると断定せざるを得ない。

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