石油決済通貨多様化の流れ!?

石油ショックを演出した黒幕からみて、石油ショックの本当の目的は「ペトロダラーシステム」の構築にあったことは、名著「ロックフェラーの完全支配」、「コールダー・ウォーなどの本で述べられている。

その、「ペトロダラーシステム」は、今や安泰ではなくなりつつある。

▽▽▽ 引用開始 ▽▽▽

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 「宮崎正弘の国際情勢解題」 
    令和四年(2022)12月14日(水曜日。討ち入りの日)
        通巻第7552号
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 ペトロダラー体制に挑戦する「ペトロ人民元」
  欧米に中国通貨への脅威論が拡大
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 習近平とサウジ皇太子との首脳会談、ひきつづいた湾岸諸国首脳との一連の会議で、石油ガスの人民元決済が提議されたと観測されている。
表向きの記者会見では、「議題にはならない」とし、サウジ外相は「中国側に『まだ時期尚早』と伝えた」と述べた。

 じつは過去六年間、水面下で人民元決済の実現性が話し合われてきた。
 トランプ政権のときは、一笑に付されたが、バイデン政権がサウジと対立するようになったため、米沙関係が急速に冷却化した。

ドル基軸体制を強固に支えてきた「ペトロダラー体制」を中国は根底から揺らそうとしている。この中国の野望にサウジアラビアが応じるとなれば、大規模な通貨戦争に到ることは必至であり、欧米に急速な警戒感が拡がったのである。

 嘗てサダム・フセインが大量破壊兵器を保有したという嘘を流して米国はイラクを爆撃し、サダムを吊し、カダフィを暗殺した。
いずれもペトロダラー体制に正面から挑戦したからである。

 このタイミングをみはらうたかのようにEU中国大使が『サウスチャイナ・モーニングポスト』の独占インタビューに応じた。
 ホルヘ・トレド・アルビナナ大使は、「中国政府は発展途上国の債務負担を軽減する手助けをしなければならない。世界の後発開発途上国の債務負担の軽減を支援する責任があり、世界の最貧国は2022年中に300 億米ドルの債務返済に直面している」

 アルビナナ大使は続けて、「リスケなど債務再編を進めなければ、多額の債務を抱える低・中所得国に、長年にわたる債務返済の問題、低成長、過小投資という重荷がかかる」として中国の膨張に釘を刺した。

     ☆□☆◎み□☆☆□や☆□☆□ざ☆□☆□き☆□☆□  
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田中宇の国際ニュース解説 無料版 2022年12月30日 https://tanakanews.com/mail/

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★中国が非米諸国を代表して人民元でアラブの石油を買い占める
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この記事は「中露が誘う中東の非米化」の続きです。
https://tanakanews.com/221221Saudi.htm

前回の記事で、中国の習近平が12月初めにサウジアラビアを訪問して、アラブ諸
国の全体との関係を強化した話を書いた。その後わかったのだが、習近平とサウ
ジのMbS皇太子は、世界経済を根底からひっくり返すような内容の取り決めを結
んでいた。それは、サウジがこれまで輸出原油のすべてを米ドル建てで売ってい
たのをやめて、輸出原油の多くを人民元建てで、中国とその傘下の諸国に売る新
体制に移行する話だった。

https://www.goldmoney.com/research/inflation-recession-and-declining-us-hegemony
Inflation, Recession, & Declining US Hegemony

習近平のサウジ訪問に合わせてアラブなど30カ国の首脳陣がサウジに結集し、習
近平と会っている。サウジだけでなく、UAEやクウェートなどペルシャ湾岸のア
ラブ産油国の全体が、ドル建てで米国側(米欧など)に売る石油を減らし、人民
元建てで中国やその他の非米諸国に売る石油を増やすことを決めたと考えられる。
ドルの基軸性は多方面で低下しているので、この転換は不可逆的なものだが、
転換に要する期間は数年とか10年がかりとかになりそうだ。

サウジアラビアは1974年以来、ドル建てだけで原油を輸出してきた。米国は戦後
の財政放蕩の結果、終戦時にブレトンウッズで決めた金本位制を守れなくなり、
1971年の金ドル交換停止(ニクソンショック)で金本位制を放棄してドルの安値
と信用失墜が加速した。1974年の米サウジ協定は、失墜したドルの威信を取り戻
すためのもので、サウジが原油をドル建てのみで売ることによって、ドルは石油
の貴重さと結びついた通貨(ペトロダラー)の地位を確保し、見返りに米国はサ
ウジを軍事的に守る安全保障を確立した。このペトロダラー体制と、その後
1980年代以降の債券金融システムの急拡大により、ドルは強い覇権・基軸通貨の
地位を取り戻した。

https://quoththeraven.substack.com/p/the-new-cold-war-has-begun
The New Cold War Has Begun

だが米国は、2001年の911テロ事件以降、事実上サウジにテロ支援国家の濡れ衣
を着せるなど、サウジを困らせることを連続してやり続けた。米国は、2003年に
イラクを侵攻・占領して失敗し、イラクをスンニ派支配の国からシーア派(イラ
ン)支配の国に転換してしまったり、2011年からはシリア内戦を起こして失敗し、
この地域でのサウジの影響力を低下させた。同じ2011年には、米国がエジプト
などで「アラブの春」を誘発し、エジプトをサウジ傘下のムバラク政権からサウ
ジの敵であるムスリム同胞団の政権に転換してしまった。2015年にはイエメン戦
争を起こしてサウジを泥沼のイエメン占領に陥れた。

https://tanakanews.com/110212egypt.htm
やがてイスラム主義の国になるエジプト

(911テロ事件はサウジ人らの仕業でなく、米諜報界の自作自演の可能性が高い。
侵攻される前のイラクのサダム・フセイン政権は、米国から制裁されていなかっ
たら同じスンニ派としてサウジともっと仲良くできた。イエメン戦争は、イエメ
ンに駐留していた米軍が突然撤退することで引き起こし、サウジはイエメンで
泥沼の内戦介入に追い込まれた)

https://tanakanews.com/150331yemen.php
米国に相談せずイエメンを空爆したサウジ

米国はイランに核兵器開発の濡れ衣を着せて敵視し続けたので、対米従属のサウ
ジもイランを敵視せざるを得ず、米国の中東覇権が低下するほどイランが台頭し、
サウジは不利になって馬鹿をみている。これらの米国による中東政策の失敗の
連続は、サウジに対する「意図的な嫌がらせ」とも感じられる。サウジ王政は、
911直後には米国に着せられた濡れ衣を黙認していたが、2015年に若いMbS皇太子
が独裁的な実権を握った後、米国から離反する傾向を強めた。中東の覇権は、自
滅的に失敗し続けた米国から、イランやシリアなどに味方して優勢になった中露
に移っていき、サウジも米国から離れた分、中露との戦略関係を強化した。

https://tanakanews.com/171119saudi.htm
サウジアラビアの自滅

米国の中東覇権が低下しても、ペトロダラー体制は現在まで維持されてきた。サ
ウジは、すでに中国に対して原油を人民元建てで売っているふしがあるが、公式
な話になっていないのでペトロダラー体制は崩れていない。だが、今年初めにウ
クライナ戦争が起こり、欧米がロシアから石油ガスなど資源類を買わない対露制
裁を開始し、中国など非米諸国がロシア側について、世界の資源類の利権の大半
が中露・非米側に行き、G7諸国など米国側が持っているのは金融バブルだけとい
う状況になるとともに、MbSのサウジは勝ち組になるため、非米側に入る傾向を
一気に強めた。

https://tanakanews.com/221010opec.php
産油国の非米化

そして今回の習近平のサウジ訪問で、サウジは石油輸出の中心的な通貨をドルか
ら人民元に切り替えていくことを決めた。50年に及ぶペトロダラーの歴史が終わ
り、ペトロユアン体制に転換していく流れが始まった。

https://finance.yahoo.com/news/suddenly-everyone-hunting-alternatives-us-130000587.html
Suddenly Everyone Is Hunting for Alternatives to the US Dollar

サウジの石油輸出量は日産700万バレル台で、中国の石油輸入量は日産1000万バ
レル超だから、中国だけでサウジの石油を全部買い占めることができる。そうで
なく、中国はサウジの輸出石油の全量を人民建てで買い上げ、その輸入枠の一部
を一帯一路やその他の非米諸国の転売することもできる。サウジ以外の産油諸国
(多くが非米側)やロシアなどOPEC+が丸ごとこのペトロユアン体制に参加し、
非米側の全体が人民元建てで石油を輸出入するようになりうる。

世界の石油利権の大半は非米側にある。先進諸国も、OPEC+から石油を輸入しよ
うと思ったら、ドルでなく人民元を用意せねばならなくなる。世界の石油は、中
国側に買い占められていく。米欧が、この流れを阻止するためにサウジと中国を
経済制裁すると、米欧が買える石油がなくなってしまう。ウクライナ戦争の対露
制裁でロシアからの石油ガス輸入を止めたので、欧米とくに欧州が買える石油ガ
スが足りなくなっているが、それと同じことがもっと大きな規模でこれから起きる。

https://thecradle.co/Article/Columns/19565
Escobar: Xi Of Arabia & The PetroYuan Drive

米国側のマスコミは、習近平がサウジ訪問時にペトロユアン体制を作りたいと表
明したことを報道しつつも、それが実現するはずがない、ペトロダラー・米覇権
体制が揺らぐはずがない、習近平が猛言しているだけだと「解説」している。だ
が私から見ると、米覇権に対する超楽観論で猛言しているのはマスコミの方だ。
ウクライナ開戦後に対露制裁としてロシアからの石油ガス輸入を止めた
欧州はとても困窮している。欧州の困窮を見るだけで、ロシアだけでなくサウジ
(や他のOPEC諸国)の石油までもが米国側に来なくなったらどんなに困るか、簡
単に想像がつく。

https://tanakanews.com/221005russia.htm
米英覇権を潰す闘いに入ったロシア

世界はウクライナ戦争開始後、米国傀儡のG7など先進諸国と、米国の言うことを
聞かない傾向を強める非米諸国との分裂が一気に強まった。世界のトップ20の産
油国のうち、米国側は米加ノルウェー英の4か国しかない。4か国の合計で産油
量はトップ20全体の28%、埋蔵量では15%を占めるに過ぎない。残りは非米側だ。
米国は、産油量で世界の20%近くを占めてダントツの世界一だが、国内消費が多
いので他の先進諸国に輸出できる分は大したことない。米国側の主な原油輸出国
として加米英蘭豪があるが、この5か国の合計で、世界の原油輸出総量のうち
18%を輸出しているに過ぎない。産油量、埋蔵量、輸出量とも、非米側が世界の
70-85%を占めている。米国側と非米側の分裂が明確化・長期化するほど、米国
以外の米国側諸国はエネルギー不足が深刻化する。これがウクライナ戦争の最大
の意味である。

https://tanakanews.com/220728russia.php
資源の非米側が金融の米国側に勝つ

中国がサウジ(などOPEC)を誘って人民元建てで石油を輸入するペトロユアン体
制を具現化し始めたら、日韓ASEANなどアジアの(なんちゃって)米国側諸国は、
非公式にペトロユアン体制に入り、中国から許しを受けてサウジから元建てで
石油を輸出し続けるだろう。「なんちゃって諸国」はすでに米国側の対露制裁を
隠然と無視してロシアから石油ガスを輸入し続けている。中国やサウジは「元建
て」にこだわっているのでなく「失策と圧政だらけの米国の世界支配をやめさせ
るためにドル建てをやめること」にこだわっている。だから中国が了承すれば、
日本は円建てでサウジやOPECから石油を輸入できるようになるし、韓国はウォン
建てで、インドはルピー建てで輸入できる。サウジは外貨準備を多様化したいの
で歓迎だ。この体制下で、中国とインドの対立も解消されていく。なんちゃって
の隠然非米化・非ドル化がどんどん広がる。

https://oilprice.com/Energy/Crude-Oil/The-Era-Of-Cheap-Oil-Has-Come-To-An-End.html
The Era Of Cheap Oil Has Come To An End

これからの日本は中国やサウジやロシアに媚を売らないとエネルギーを売っても
らえなくなる。だが、マスコミはそのような状況を全く報じず、むしろ逆に、中
露やサウジを独裁だ残虐だと酷評してボロクソに報じている。酷評して今だけ気
持ちいいかもしれないが、これからとても困るのだということを無視している。
大馬鹿である。マスコミ権威筋が無視するので、非米化は隠然と進む。

△△△ 引用終了 △△△


物事には表と裏がある。

産経が、トランプ不利な情報ばかり報道していることを知っている方なら納得できる話である。

ウクライナ紛争は、軍事的主役はウクライナとロシアであるが、金融通貨的には、ペトロダラーシステム覇権争いの様相を呈しているのは確かである。

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