産業構造としての戦後レジーム

敗戦後の復興に際し、国策上の産業政策として「傾斜生産方式」が採用された。
石炭・鉄鋼を重点的に増産、さらに化学肥料、電力などの重点的な産業に資材が重点配給された。

しかし、高橋洋一は著書「戦後経済史は嘘ばかり」にて、このシステムは「まるで効果がなかった」と結論づけている。


傾斜生産方式
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%82%BE%E6%96%9C%E7%94%9F%E7%94%A3%E6%96%B9%E5%BC%8F


これら傾斜生産方式で体制強化された産業は今どうなっているか。

石炭業界は、ほぼ消滅。鉄鋼業界は、国際競争に晒され、高炉の集約、大規模合併が相次いだ。何とか生き残っている。化学業界も同様。

電力業界は、戦時体制後に発足した九電力体制が今も続いている。早い話、戦後レジーム体制が存続、民主党政権交代の際に、電力労組は連合内の中核組織として機能した。今は、国民民主党支持。

さて、民主党政権時代に始まった再エネ賦課金制度は今も続いている。第二次安倍政権時代においては電力自由化がさらに強化された。原発再稼働については、第二次安倍政権、その後の政権にて、支持率対策への配慮のためか、熱心に取り組んでいるとはとても思えない。


新たな市場の創出 ~電力会社を選べる時代へ~
https://www.kantei.go.jp/jp/headline/seichosenryaku/energy_kaikaku.html


実は、九電力体制存続の視点からみると、再エネ賦課金制度継続、電力自由化、原発再稼働延期はマイナスに作用する。

つまり、政府も自民党ははっきりとは言わないが、九電力体制存続について好ましいとは思っていないのではないか。

実際、過去、東電の経営者は経団連中枢役職ポストを独占、政府に対しさまざまな政策提言を行った。東電本体はどうだったかというと、原子力分野における技術基準を始めとして、法規制等、資源エネルギー庁に対し、格上の立場で君臨した。これは、東大工学部出身の人が、国家公務員試験を受験結果の席次で、①国家公務員試験上位合格者なら経済産業省、②国家公務員試験中位合格者なら東電、③国家公務員試験下位合格者なら資源エネルギー庁を就職先として選んだ?結果とみられる。

私は別の大学だが、就職先の選定(推薦状の取得)に関して、国家公務員試験の席次を目安に上位者から就職先を選べるシステムになっていた。土木系の学科の場合は、①建設省、②
スーパーゼネコン、③都道府県庁みたいな序列だったように思う。

要するに、政権、行政機関からみて、東電は巨大なだけでなく優秀過ぎて扱いにくい存在だった可能性がある。初代原子力規制委員会委員長は東北大卒、二代目原子力規制委員会委員長は菅直人と同様、東工大卒だった。今の委員長は大阪大卒。
原子力規制委員会の委員長に東大卒以外の人が就任するのは、偶然だろうか。(東大卒が君臨する)対東電対策に対する配慮の結果と私はみる。

従って、「送配電完全分離とする提言」に対し、西村経済産業大臣は、「かつて東電から格下に扱われて悔しい思いをした役人たちの東電に対する仕返しの報告書」なのかという意味に読める。もちろん西村大臣は東大卒。


送配電完全分離の提言 西村経産相「虚心坦懐の議論を」と牽制
https://www.sankei.com/article/20230303-YVBSC5UCABMX3O2M4ZMLLHGG3I/


要するに、戦後レジーム組織として再編成され、その後肥大化して、財界を代表して政権運営に注文を付け、労使一体となった選挙活動を行い、政権交代を仕掛けるような労組を有する企業は、政権中枢からみて煙たい存在であるため、(政権に反発させない程度に)飼い慣らしたいとする思惑があるのではないか、と考えてしまうのである。

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