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頂門の一針 6516号
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2023(令和5年)年 5月29日(月)
世間の岸田氏の高い評価:藤井聡
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世間の岸田氏の高い評価
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編集長 藤井聡
岸田氏が座長を務めるG7広島サミットに、国内世論は高い評価を与えています。事実、岸田内閣の支持率は、このサミットを契機に10ポイント近くも跳ね上がるという結果が報告されています。
しかし、世間の岸田氏の高い評価とは裏腹にその「内実」を観れば、今回のG7広島サミットは、極めて深刻な国益毀損を、日本にいくつも与えるものでした。当方はその問題を、『表現者クライテリオン編集長日記』(https://foomii.com/00178)にて、サミット期間中、連日配信しましたが、今日はその中でも、最も深刻な問題である、「謝罪」不在の米国バイデン大統領の広島慰霊について、慰霊訪問の数時間後に公表した当方の見解を、下記にご紹介差し上げます。
是非、ご一読いただき、読者お一人お一人に、この問題の深刻さについてご理解頂きたいと思います。
『原爆死没者の誇りを守るために、「謝罪」不在の原爆死没者慰霊を行った米国バイデン大統領、そしてそれを実現させた岸田総理大臣を、日本人は許してはならないのではないか。』
https://foomii.com/00178/20230519144211109250
本日、米国バイデン大統領を肇としたG7首脳が、広島の平和記念館を訪れ、原爆戦没者の慰霊碑に献花・黙祷を捧げました。
当方にとって最大の焦点は、バイデン大統領が「謝罪」するか否か、という一点でしたが、誠に遺憾ながら、バイデン大統領からの謝罪の表明はありませんでした。
https://www.nhk.or.jp/politics/articles/statement/99216.html
その件について記者から「謝罪するのか」と質問されたのに対し、「大統領のコメントは予定されていない。訪問は歴史に敬意を表するためだ」などと述べたとのこと。
「コメントは予定されていない」と言いつつ「訪問は歴史に敬意を表するためだ」と述べた以上、謝罪の趣旨は一切含まれていないと解釈せざるを得ません。歴史への経緯と謝罪は全く異なるものだからです。
しかしながら当方はもちろん、原爆を落とす政治判断を行った米国の大統領は、謝罪せぬのなら原爆死没者を慰霊訪問すべきではなかったのではないかと考えます。
したがって、謝罪無き慰霊訪問に対して、当方は一日本人として、大きな遺憾の念を表明する他ありません。
それは、例えば自分の両親を明確な意図に基づいて殺害した殺人者が、数十年の時を隔てて当方の両親の墓標に訪れるか否かを判断するにあたり、「一切の謝罪を行わない」という事があらかじめ分かっていたのなら、墓標への「慰霊」を、一人の息子として許すことなど到底できない、ということと同じです。
万一、その慰霊が、何らかの政治的な力学によって実現し、それにもかかわらず謝罪がなかったとすれば、当方は一人の息子として、そうした「慰霊」を行った加害者が「謝罪」しなかったことを「許さない」と表明すると同時に、その「謝罪」無き慰霊を決定した政治権力者を「許さない」と表明せざるを得ない立場に追い込まれることと同じです。
なぜならもしも、そういう謝罪無き慰霊を許したとすれば、我が両親は、この加害者に殺されてしかるべきだったのだ、という事に論理の上でなってしまうからです。これは、我が両親が殺されるべき罪深き者、ないしは犯罪者であると認識しているのだということを宣言するに等しいこととなってしまいます。
ましてや、その加害者が普段「人殺しは人類に対する敵対行為だ。断じて人殺しは許されない」とうそぶき続けているとすればなおさらです。
それと同様に、バイデン大統領は、核の使用は人類に対する敵対行為だと主張し続けています。
だからこそ我々は、原爆によって死没してしまった方々の誇りを守るために、バイデン大統領の謝罪無き慰霊を、許してはならないのです。
この「断罪」は断じて「寛容の徳の不足」ではありません。
この「断罪」は、「日本人としての誇りを守るために道徳的に求められる倫理的要請」と言わざるを得ないものと考えます。
かくして少なくとも当方は、広島で原爆を落とされた事で亡くなった方々の誇りを守るために、謝罪無き慰霊を行ったバイデン大統領、ならびに、それを実現させた岸田文雄総理大臣を到底許すことはできないのです。
この件について、一人一人の日本人に、一体何が正しき振る舞いなのか、しっかりと考えていただきたいと、心から祈念いたします。
追伸:
なお、G7の岸田氏の差配は、世間の評判と裏腹に、その実態は最低最悪のものです。
まず第一に、G7の広島慰霊イベントが最低最悪のイベントだったというのは、上述した通りですが、上述の様な深刻な国益毀損をやってまで行った「核廃絶」や「ロシア核抑止」のアピールですが、全く有効性が無かったのです。
『岸田氏によるG7広島平和祈念イベントは、「核廃絶の機運醸成」「ロシアの核使用抑止」にとって何の役にも立たない。』
https://foomii.com/00178/20230522071136109338
それどころかむしろ、ロシアの戦争の被害と核使用リスクを「拡大する」という逆効果をもたらす帰結を生んでいるのです。
『広島G7でウクライナ支援を鮮明にした岸田総理は、戦争被害と核使用リスクの双方をいたずらに拡大させた。』
https://foomii.com/00178/20230523081434109390
さらに言うなら、今回、G7で日本にとって最も大切だった対中安全保障問題について、空念仏を唱えるばかりで何の実質的成果も得られなかったのです。というかむしろ、相対的に台湾有事のリスクを拡大する事にすらなってしまったのです。
『「平和・反核」アピールを通して、(対中国圧力の増強を通した)日本の安全保障増強のチャンスを自ら潰した岸田総理によるG7運営』
https://foomii.com/00178/20230520153702109290
本当に、最低最悪の帰結であり、最低最悪の宰相だと言わねばなりません。誠に残念です。
△△△ 引用終了 △△△
上記記事の著者は、安倍政権時代の内閣参与。政治的には安倍晋三シンパ。岸田首相が嫌いなのはわかる。私も岸田は政治家として好きなタイプではない。
著者は、すべてダメだみたいな書き方で岸田首相を批判している。
以下、私なりに感じた疑問点について論点整理した結果を示す。
■極めて深刻な国益毀損の件
最初の疑問点は、「今回のG7広島サミットは、極めて深刻な国益毀損を、日本にいくつも与えるものでした。」についてである。
岸田首相が行った「核廃絶」や「ロシア核抑止」のアピールは深刻な国益毀損だったとしている。
では、岸田首相は、このG7にて、どう言えばよかったのか、もちろん、そのために「どのような事前準備をすべきだったか」を含めての話となるが、どうすれば良かったのかについての説明がない。入念な事前準備無しに、これまでの日本政府のスタンスと異なる路線を選ぶことは国際常識的に拙いのは明らか。日本は国連の敵国条項適用国であるからだ。日本が国際社会で「唐突に核武装の取り組みを肯定する」ことは難しい。著者がイメージする「今回取りえる国益上の措置」とは何であるのか。
著者は、内閣参与経験があるのだから、「岸田首相が読み上げるシナリオベース」で著者の提言として示すべきだったように思う。
■バイデン大統領に「謝罪」する義務はあるのか、大統領は職責上謝罪する立場なのか
「当方にとって最大の焦点は、バイデン大統領が「謝罪」するか否か、という一点でしたが、誠に遺憾ながら、バイデン大統領からの謝罪の表明はありませんでした。」とある。
もし、バイデン大統領に「謝罪」する義務はあるとすると、日本政府の首相は永遠に騙し討ちで真珠湾攻撃し開戦したことを謝罪をしなくてはならなくなる。文脈的に、アメリカ大統領は職責上、謝罪する義務があると言わんばかりである。
バイデンにそんな義務はあるとは思わない。歴史認識事案での安倍談話にある、「後世に謝罪の義務を負わせない」とは、道理として眺めると、敗戦国だけでなく、戦勝国についても当てはまることではないか。
■対中安全保障問題に関する議長国としての対応
「今回、G7で日本にとって最も大切だった対中安全保障問題について、空念仏を唱えるばかりで何の実質的成果も得られなかったのです。というかむしろ、相対的に台湾有事のリスクを拡大する事にすらなってしまったのです。」とあるが、今回ゼレンスキー大統領を議長国として受け入れ、G7参加各国がウクライナ支援を表明、ゼレンスキー大統領がG7の主役みたいな形で振舞ったことは、中国からみて台湾侵攻を思いとどまる政治・軍事的効果があったとみていいのではないか。
中国が日本大使を呼んで抗議し、日本の大使が言い返した事実は、中国にとって、「G7における議長国としての声明等は、中国にとって空念仏ではない」証左ではないのか。
■本当に「最低最悪」の政権なのか?
「最低最悪の帰結であり、最低最悪の宰相」と著者は締めくくっている、私は、岸田が安倍晋三亡き後、安倍晋三並みの外交活動が実行できる唯一の政治家と思っている。
岸田以外に、今回のG7を議長国として仕切れる政治家は他に居るのか。岸田首相が安倍政権時代に外務大臣だった経験が生かされたと評価している。
岸田以外にふさわしい政治家が居ないとみた場合、「最低最悪」との評価とする根拠を見出すことは難しい。
■総括
岸田首相は政治家として嫌いなタイプである。それでも、安倍晋三亡き後の、岸田首相の外交活動は評価したいと思っている。内閣支持率も上昇傾向である。多くの人が、岸田という政治家について評価しつつある中で、誰も理解しがたい論理で、「最低最悪」という言い方でぶった斬ることは私はしない。学者出身の言論人なら、もっと論理的表現に徹するべきと考える。
最後に、冒頭で紹介した記事の前日に同じメルマガにて配信された高橋洋一の記事を一読したい。
著者は、編集長なので、前日配信記事を読んだはずである。それとも著者と高橋洋一はソリが合わず、我慢しきれず、高橋洋一記事批判の代わりに自ら出稿した可能性もある。
高橋洋一の記事は、(すべてダメという書き方ではなく)良い点はきちんと褒めている。批評の基本的作法を弁えているように思う。少なくとも、(前日に配信された)高橋洋一の記事を読んでいれば、すべてダメだと評価するのは論理的に無理があるように思う。
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わたなべ りやうじらう のメイル・マガジン
頂門の一針 6515号
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2023(令和5年)年 5月28日(日)
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広島G7の成果とサプライズ
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高橋洋一
【日本の解き方】原爆資料館視察の不足を補って余りあるゼレンスキー氏訪日 中露の孤立ぶりを際立たせたインドとの握手 夕刊フジ令和5年5月25日号
21日に閉幕した先進7カ国(G7)首脳会議ではどのような成果があったのか。日本として得るものは大きかったのか。
筆者は、自分のYouTube「高橋洋一チャンネル」で「広島サミットの注目は原爆資料館に連れて行けるかどうか」だと提示した。
そこでは、広島でしかできないこととして、G7首脳を原爆資料館本館に連れて行けるかどうかを挙げた。その上で、核廃絶は長期的な目標として、それまでは核保有国の責任、核共有・核抑止に議論を持っていくべきだとした。他のネット番組では、原爆資料館本館に連れて行き、それを全世界に発信できるかどうか、バイデン米大統領が原爆という戦争犯罪に対して謝罪するかどうかなどもポイントと言った。
実際には、G7首脳の原爆資料館視察の中身はほとんど非公開だった。漏れ聞くところによると、視察したのは本館ではなく東館だったようだ。各国首脳の反応も限定的だった点はやや不満が残るが、原爆資料館にG7首脳全員を連れて行った点は評価できる。
その後、ウクライナのゼレンスキー大統領の訪日が急遽発表された。これは大きなサプライズであり、原爆資料館視察の足りないところを補って余りがあったと言ってもいいだろう。
それ以上に、衝撃だったのは、ゼレンスキー氏がインドのモディ首相と会談したことだ。特に、両者の握手の写真が世界に発信されたのはすごい。もちろん、インドはどの国とも等距離に外交するので、西側にくみしたとは簡単にいえないが、それでもロシアには痛い写真だ。これだけでも、今回の広島サミットは開催意義があっただろう。
今回の成果文書であるG7広島首脳コミュニケには、1.ウクライナ2,核軍縮・不拡散3,中国問題などが盛り込まれた。
1では、ロシアは、進行中の侵略を止め、国際的に認められたウクライナの領域全体から即時、完全かつ無条件に撤退せよ、それまで、G7は支援するというものだ。
2は、将来目標は核のない世界だが、それまでは核保有を 認めて核軍縮現実路線だ。
3は、中国に対してさまざまな問題を指摘している。
これに対し、名指しされたロシアと中国は反発している。もっとも、今回のサミットには、先進国のG7だけではなく、豪州、ブラジル、コモロ、クック諸島、インド、インドネシア、韓国、ベトナムの首脳の参加を受け入れたので、中露の孤立を際立たせた。
3,中国問題のところでは、中国に対し、「ロシアが軍事的侵略を停止し、即時に、完全に、かつ無条件に軍隊をウクライナから撤退させるよう圧力をかけることを求める」とされたのもよかった。
これで、岸田文雄政権の支持率は上がるだろう。株価上昇、コロナ減退という環境で、安倍晋三元首相1周忌、懸案のLGBT法案もスキップできるという「惑星直列」ともいえる解散・総選挙の好機だが、岸田首相はどう判断するのだろうか。(元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)
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