ガスヒートポンプの法的未整備問題

先の原稿に関して、Suica割さんから次のような情報提供があった。


▽▽▽ 引用開始 ▽▽▽   

https://adachioffice.com/denanhou/tokuteiigailist/

電気冷蔵庫等冷媒を使用して、熱移動を行うことを利用する器具は対象に入っている。
そのことは何かのヒントにならないかなと思います。
同様の原理を使っている以上は、規制をかける根拠の一つにはなりそうです。

△△△ 引用終了 △△△


上記サイト情報から、電気冷蔵庫のほかに電気冷凍庫、電気冷房機、電気冷風機、温風暖房機、電気温風機等も電気用品安全法適用対象であることがわかった。


特定電気用品以外の電気用品全リスト
https://adachioffice.com/denanhou/tokuteiigailist/


次に、電気冷蔵庫等、冷媒を使用するヒートポンプが組み込まれている機器について電気用品安全法の適用対象となっている関係で、ガスヒートポンプが適用対象になっていることを確認する目的で経済産業省HPを調査した。


対象非対象解釈例一覧表(電気用品別)
https://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/denan/subject01.html


一読してわかったことがある。
それは、ガスヒートポンプという機器について、適用対象機器であるととれる説明、適用除外対象外とする解釈、どちらも存在していない。
つまり、ガスヒートポンプは、機器として電気用品安全法上まったく認知されていない。


名称的にガスヒートポンプに近い電気機器として、「ガス燃焼式エアコン用屋内機」が存在、適用除外とする解釈が読める。

▽▽▽ 引用開始 ▽▽▽

https://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/denan/kaishaku/taishou_hitaishou/20020617/gas_airconditioner.pdf

温風暖房機
温風暖房機(定格消費電力が500W以下のものであつて、熱源としてガス又は石油を使用するものに限る。)

平成14年6月17日 製品安全課
商品名等
(電気用品名等)
ガス燃焼式エアコン用屋内機
1 当該商品等の概要
○用途、機能、性能
 屋内空調(暖房又は冷房)に供するもので、屋内機と屋外機に分離されており、
屋内機と屋外機は一体不可分で単独で動作することができない。電源は屋外機に供
給され、屋内機には屋外機より供給されるものである。
 屋内機の製造事業者は、屋外機の製造事業者に納入し、屋外機の製造事業者が完
成製品を製造するものである。
○構造、仕様、意匠
 屋外機のガス燃焼吸収式冷却装置で温水又は冷水を作り、その温水又は冷水を屋
内機に送り屋内空調を行う機器である。屋内機の機能は「ファンコイルユニット」
であるが、屋内機と屋外機は一体不可分で、屋内機のリモコンにより運転モード(暖
房・冷房・ドライ・風量調節・温度調節等)設定を行い、屋外機の各機能は屋内機
からの信号を受けて動作する。
○ 主な使用者、販売先
一般家庭用として販売・施工される。
2 対象・非対象の解釈
 当該室内機単体は、非対象として取り扱う。
 ただし、ガス燃焼式エアコン全体としては「温風暖房機」として取り扱う。
(理由)
 温水又は冷水を用いて屋内空調を行うものなので、ファンコイルユニットとも考
えられるが、屋内機と屋外機は一体不可分であり、かつ、ガス燃焼吸収式冷却装置
で温水又は冷水を作るものなので、ガス燃焼式エアコン全体として「温風暖房機」
で対象として取り扱うのが、妥当と判断する

△△△ 引用終了 △△△

「当該室内機単体は、非対象として取り扱う。ただし、ガス燃焼式エアコン全体としては『温風暖房機』として取り扱う。」という解釈文をどう読み取るべきか。
燃料がガスである空調機器について、適用対象としている点に注目したい。
推測となるが、電気を起動用および制御電源用として必要としているため、適用対象とした可能性がある。
この解釈に沿うと、ガスヒートポンプの場合、室内機ではなく室外機とすることが想定されるため、ガス燃焼式エアコンシステムとして『温風暖房機』として取り扱うことが可能な気がする。

次に、給湯機能という視点からガスヒートポンプの適用の有無を確認しておきたい。
燃料がガスである給湯目的の機器について、どのような解釈となっているかについて注目したい。

▽▽▽ 引用開始 ▽▽▽ 
  https://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/denan/kaishaku/taishou_hitaishou/20080228/heat-pomp_shiki_denki_kyuutouki.pdf

電気温水器

平成20年2月28日 製品安全課
商品名等
(電気用品名等)
ヒートポンプ式電気給湯機(自然冷媒ヒートポンプ式電気給湯
器)
1 当該商品等の概要
○用途、機能、性能
本製品は、二酸化炭素を冷媒とするヒートポンプ式の貯湯器であり、電熱装置は
備えていない。
一般家庭用のものであり、貯湯した温水は、台所、浴室等に用いられる。
○構造、仕様、意匠
台所、浴室等から、リモコンによって温度制御等ができる。
定 格:200V、50-60Hz、1.245kW
○主な使用者、販売先
一般家庭用
2 対象・非対象の解釈

電気用品安全法上は、非対象として取り扱う。
(理由)
本製品は、ヒートポンプ式貯湯器であって、電熱装置を用いていないことから、
「電気温水器」に該当せず、非対象として取り扱うことが妥当と判断する。

https://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/denan/kaishaku/taishou_hitaishou/20080228/co2_heat-pump_kyuutouki.pdf

電気温水器
電気湯沸器

平成20年2月28日 製品安全課
商品名等
(電気用品名等)
業務用CO₂ ヒートポンプ給湯機
1 当該商品等の概要
○用途、機能、性能
本製品は、冷媒に二酸化炭素(CO₂ )を用いたヒートポンプ式で、凝縮器部の
熱交換器の熱で約90℃の湯を沸かすことができる電気給湯機である。
なお、工場オプションとして、熱交換器部の吐出水配管に貯湯タンクの湯温維持
用の保温ヒータ又は湯温上昇の昇温ヒータを組み込むことにより、湯温維持又は湯
温上昇機能を付加することができる。
○構造、仕様、意匠
ヒートポンプユニット(本体)と貯湯タンクユニットで構成されている。
定 格:3相、200V、50/60Hz、7/8.9kW、貯湯容量3kℓ
保温ヒータ 4kW、 昇温ヒータ 8kW
○主な使用者、販売先
病院、学校、老人ホーム等大型施設等
2 対象・非対象の解釈

ヒートポンプ式電気給湯機は、非対象として取り扱う。
保温ヒータ及び昇温ヒータは、特定電気用品以外の電気用品中、電熱器具の「電
気瞬間湯沸器」として取り扱う。
(理由)
ヒートポンプ式電気給湯機は、電熱装置を用いていないことから、「電気湯沸器」
及び「電気温水器」に該当しないことから、非対象として取り扱うことが妥当と判
断する。
保温ヒータ及び昇温ヒータは、器内を水が通過することにより、昇温する電熱器
具であることから、「電気瞬間湯沸器」として取り扱うことが妥当と判断する。

△△△ 引用終了 △△△

電気温水器は適用対象であるが、ヒートポンプ式電気給湯機(自然冷媒ヒートポンプ式電気給湯器)が適用除外機器となっていることがわかった。
実は、起動時、制御電源等に関して、バッテリー組み込みでない場合、ガスヒートポンプは電気を必要とする。室外機の周辺にガスヒートポンプの受電設備が存在するのはこの目的のためと考えられる。石油ストーブとて、吸排気配管を有する大型機器の場合、電気無しで起動・運転しないことはご存じのことと思う。

最後に、上記の調査結果からわかったことを3点列挙し、本稿のまとめとしたい。


・経済産業省HP情報「対象非対象解釈例一覧表(電気用品別)」から、ガスヒートポンプという機器について、適用対象機器であるととれる説明、適用除外対象外とする解釈、どちらも存在せず、ガスヒートポンプは、機器として電気用品安全法上まったく認知されていない
・名称的にガスヒートポンプに近い空調機器として、「ガス燃焼式エアコン用屋内機」が存在、適用除外と解釈している
・給湯機能を有する電気機器としての電気温水器は電気用品安全法の適用対象であるが、ヒートポンプ式電気給湯機(自然冷媒ヒートポンプ式電気給湯器)が適用除外機器となっている


太陽光発電設備、エコキュートの電気用品未整備状態に加え、ガスヒートポンプに加えて法的未整備状態にあることが判明した。
「電気用品安全法という法律の枠組み」のままでは電気用品安全法解釈上の矛盾は避けられず、法改正が必要な状態にあると考えざるを得ない。

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