利上げする前に「マネタリーベース縮小策」、「キャリートレード規制」実施を先にすべきだった?  

本稿は、マネタリーベースの推移、学閥の弊害の可能性について考察することを目的としている。

池田信夫(東大経済学部卒)が、利上げ発表後の急激な円高は黒田日銀の過剰流動性だとし、「今回の世界的な混乱の原因はマネタリーベースをばらまいたまま後始末もしないで逃げた黒田前総裁であり、その後始末をした植田総裁は被害者である。円キャリーはまだ半分しか巻き戻されていないので、世界経済の混乱はまだ序盤である。国会が閉会中審査で植田総裁を呼ぶなら、黒田前総裁も呼ぶべきだ。」と結論づけた。

池田信夫については、良い事を言う人だという印象があるが、「後始末もしないで逃げた黒田前総裁(東大法学部卒、日銀総裁在任期間は、2013年3月20日 – 2023年4月8日)」という言葉がどうもひっかかる

黒田日銀の過剰流動性が100兆円の「円キャリートレード」を生んだ
https://agora-web.jp/archives/240807104419.html

参考までに、4年前のマネタリーベースの記事を参照したい。
この時点での日銀総裁は黒田総裁。
この記事は、マネタリーベースが膨らんでいることは問題視しておらず、「すでに日銀は金融政策の政策目標をマネタリーベースという量から金利に戻している。」としている。
黒田総裁は、「マネタリーベースをばらまいた後、マネタリーベースを減少させる目的で?、金融の政策目標をマネタリーベースから金利に戻しているので、「池田信夫の逃げた」する指摘は妥当な指摘なのか。疑問に思う。

▽▽▽ 引用開始 ▽▽▽

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/6ebca1de0e571fec4a3808c4595d98483c1db986

マネタリーベースは過去最大を記録中、その意味とは

久保田博幸金融アナリスト
2020/8/5(水) 9:55
 日銀は4日に7月のマネタリーベースを発表した。マネタリーベースとは、日本銀行が世の中に直接的に供給するお金のこと。具体的には、市中に出回っているお金である流通現金(「日本銀行券発行高」+「貨幣流通高」)と日本銀行当座預金(日銀当座預金)の合計値となる(日銀のサイトより)。

 日銀の金融政策において、マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続するとしている。

 消費者物価指数(除く生鮮食品)が2%に全く届いておらず、マネタリーベースは増え続けている。ただし、ここにきての増加については新型コロナウイルスで打撃を被った企業の資金繰りを支える金融機関に対し、通常より有利な条件で資金を供給するなどしていることも影響しているようである。

 7月末のマネタリーベースは前年同月比11.2%増の576兆3027億円となり、4カ月連続で過去最大を更新した。内訳として、日銀券(紙幣)は同6.0%増の113兆8987億円、貨幣は1.4%の4兆9551億円、そして金融機関が日銀の当座預金に預けている残高は12.7%増の457兆4489億円とこれが大きく伸びている。

 マネタリーベースはすでに日本のGDPを上回っている。日銀が金融政策において国債を主体に買い上げており、その結果としてマネタリーベースも増加させた。しかし、マネタリーベースをここまで増加させても物価はビクともしないところを見る限り、マネタリーベースと物価との相関はないとみなすのが普通なのではないかと思われる。

 現状は新型コロナウイルスによる経済への影響を軽減させるための措置が必要なことで、それによるマネタリーベースの増加はいたしかたない。しかし、ここまで積み上がったマネタリーベースを「物価を上げるため」にさらに積み上げる必要はない。

 マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続するとの金融政策決定会合の公表分の文面もそっと削除しても問題はないように思うのだが。すでに日銀は金融政策の政策目標をマネタリーベースという量から金利に戻している。

△△△ 引用終了 △△△

続いて、マネタリーベースの推移を参照しておきたい。
リーマンショック以降、日本以外の各国がマネタリーベースを激増させる中、当時の白川日銀総裁(東大経済学部卒、日銀総裁在任期間は、2008年4月9日 – 2013年3月19日)は、日本一カ国のみがマネタリーベースを同程度を維持していた。マネタリーベースは黒田日銀総裁時代に徐々に増加、それに伴い、円高は徐々に是正された。

2010~2023
https://thefinance.jp/law/240129
日銀マネタリーベース20102023.jpg

~2011
http://kokka-vision.jp/_src/sc1203/92868CB4.pdf
日銀マネタリーベース20002011.jpg

白川総裁時代のマネタリーベース供給不拡大措置が円高の主要因だったことは明らか。

ここで、池田信夫(東大経済学部卒)が指摘した、「マネタリーベースをばらまいた」黒田総裁(東大法学部卒)が、なぜ異常な規模で(=異次元の金融緩和)マネタリーベースを拡大したのか、拡大せざるを得なかったのか。現在日銀審議委員の安達誠司(東大経済学部卒、日銀審議委員には2020年1月28日に就任)が2012年に書いた「円高の正体」という本に、適正なマネタリーベースの規模についてどう書いてあるのか、確認しておきたい。


▽▽▽ 引用開始 ▽▽▽

円高の正体

極めて単純な結論

・円高は日本経済にとって悪である
・円高は、日本の予想インフレ率の差によってもたらされている
・現在(2011年11月現在)の円高とデフレは、日銀のマネタリーベース供給量が28.8~78.8兆円程度不足していることから起こっている
・日米の予想インフレ率の差を縮小するためには、日本銀行が大規模な量的緩和政策(=マネタリーベース拡大政策)を行なうことが必要
・日本経済復活のためには、日本銀行のマネタリーベース供給量を150兆円~200兆円程度にする必要がある
・マネタリーベースを150兆円まで拡大すれば円高は止まり、「1ドル=95円」までの円安局面が訪れ、日本経済はデフレから脱却し(その時のインフレ率は1.5%
程度)、2%の名目経済成長が可能になる
・マネタリーベースを200兆円まで拡大すれば、
「1ドル=115円」までの円安局面が訪れ、日本経済はデフレから脱却し(その時のインフレ率は3%程度)、4%の名目経済成長が訪れ、日本経済は完全復活を遂げることができる

△△△ 引用終了 △△△


2012年の安達説によれば、マネタリーベースが200兆円まで拡大すれば、デフレから脱却できるとしていることに注目したい。
実際のマネタリーベースの最大値は、2022年の700兆円弱。

奇妙なことに、安達誠司(マネタリーベース供給量を増やすことでデフレ脱却できるとの説を発表しているのに)、今回の利上げに賛成した。


追加利上げに2人反対 日銀審議委員の中村、野口両氏
https://www.jiji.com/jc/article?k=2024073101522&g=eco


安達誠司が日銀審議委員に選出されたのは、2020年1月28日、安倍首相在任期間(2012年12月26日~2020年9月16日)である。

ということは、安倍政権が続いていたら、安達誠司はマネタリーベース供給量による金融緩和を唱えてきた関係で、利上げに賛成したのであろうか。

金融政策に無関心で、日銀総裁が東大経済学部卒なので、同じ大学同じ学部の先輩の意向に従った可能性がないとは言えない。

同様に、池田信夫(東大経済学部卒)は、金利引上げによる株安ショックでアタフタしているであろう植田総裁(東大経済学部卒)を側面援護する目的で前任の黒田総裁(東大法学部卒)が採用したマネタリーベースについて文句を言っている気がする。

ちなみに、日銀副総裁内田眞一は、東大法学部卒。聞くところによると(櫻井よしこの動画情報)、日銀、財務省(主流派は東大法学部卒)、金融庁はほぼ毎日コッソリと打合せしているそうである。

そう考えると、日銀審議委員の構成を同じ大学同じ学部に集中しないような措置(日銀総裁と審議委員、日銀幹部が同じ大学、同じ学部とならないような措置)を講じる必要があるという結論に達するのである。


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