議員宿舎不審者案件 カウンター・インテリジェンス問題です 

本稿は、岩屋外相の議員宿舎部屋に不審者が侵入した案件について、カウンター・インテリジェンスの視点から整理することを目的としている。

まず、はっきり言えることは、「外務省です」と言うだけで、議員宿舎に侵入できたことをどう思うかである。

明らかに、氏名、住所がはっきりしない、通してはならない人を通した点で、議員宿舎の管理体制が杜撰過ぎる問題がある。
外務大臣の部屋も鍵をかけていなかったそうだが、職責上許されないことである。
はっきりしていることは、政府のカウンター・インテリジェンス対応が、徹底していないことが伺える。


岩屋外相の部屋に侵入した女性「外務省です」と名乗る 他宿舎も訪問
https://news.yahoo.co.jp/articles/048d21065e4cf1341c50d446db2cd33541843f92


インテリジェンス関連本の情報によると、戦時中のカウンター・インテリジェンス対応について厳格な対応が求められるとのこと。


▽▽▽ 引用開始 ▽▽▽

インテリジェンスの最強テキスト
手島龍一、佐藤優

情報大国イギリスの真骨頂は、何といっても第一級のヒューミントを駆使して、国家の生き残りを図った点にこそある。第二次世界大戦が勃発する時点で、イギリスとドイツは干伐を交えることを想定していなかった。このため双方ともに相手の国内にこれといったヒューミントのネットワークを持っていなかった。
情報戦の名将、カナリス提督に率いられたナチス・ドイツの国防軍諜報部(アブヴェーア)は、イギリス国内になんとかスパイを浸透させ、自前のヒューミント網を構築しようと試みた。高度な訓練を受けた情報要員を育て、苛酷な状況下で危険な任務を遂行できるスパイをイギリス国内に潜入させたいー。こう考えたアブヴェーアは、占領したのフランスにナント支局を創設し、イギリスを攻略する拠点とした。
イギリスに送り込むには、英語を完璧に話す、できればイギリス人が好もしい。アブヴェーアのナント支局は、ドイツの占領下にあったジャージー島で対独協力者を募り、反英感情に燃えるウェールズ人を見つけ出し、スコットランドの独立主義者にして狂信的なナチ信奉シャを勧誘して、プロフェッショナルなスパイに仕立てていった。そして彼らをUボートに潜ませて、ゴム製の救命ボートで海岸に上陸させ、さらには、空襲に紛れてパラシュートでイギリス国内に送りこんでいった。

第二次世界大戦を通じて、アブヴェーアがイギリス国内に浸透させたスパイ要員は総勢で四〇〇人を超えたという。これを迎え撃ったのは、イギリスのカウンター・インテリジェンス機関である保安局情報部(通称MI5)だった。解読したエニグマ信号を最大の武器にスパイのことごとくを逮捕している。そして「死刑になるか、二重スパイとしてイギリスのために働くか」と選択を迫ったのである。

△△△ 引用終了 △△△


仮に、侵入者が中国人だったとして、日中は交戦状態ではないにしても、尖閣での領海侵犯事案が相次いでいる以上、身柄拘束し住居侵入罪等の現行犯で摘発できたはずである。

しかし、外相本人は、通報することもなく、氏名等確認することもなく、退去させた。盗聴器の設置確認も議員本人の確認で問題ないことで済ませた。

カウンター・インテリジェンス対応の当事者の対応としてどうみるか。

職務上の義務違反ではないのか。

政府は、「国際的に保護される者(外交官を含む。)に対する犯罪の防止及び処罰に関する条約」を批准、外務省は内閣府主宰のカウンターインテリジェンス推進会議にも関与しているはずである。内閣情報調査室内に、カウンターインテリジェンス・センターという組織も存在している関係で、政府機関重要施設であるはずの、議員宿舎内の不審者について、大臣の立場であれば、常識的に考えて法律はなくても、カウンターインテリジェンス・センターの内規等を遵守する義務が課せられるべきだったのではないか。

そうしなければ、防諜活動は破綻すると考えるからだ。



カウンターインテリジェンス推進会議
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/counterintelligence/index.html

カウンターインテリジェンス・センター
https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jyouhoutyousa.html

防諜
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%98%B2%E8%AB%9C


以上から、岩屋外相については、当該不審者に対し、カウンターインテリジェンス上の当然の処置である、①氏名、住所、侵入目的等確認目的での身柄拘束を前提とした通報、②住所侵入罪での告訴すべき義務があった。

しかし、岩屋外相が、敢えてカウンターインテリジェンス上の問題の当事者であることに言及せず、当該不審者を通報、身柄拘束することなく、退去させた。

よって、政府が推進するカウンター・インテリジェンス対応上の不作為状態を糺すため、質問主意書を提出すると同時に、カウンターインテリジェンス上の当事者としての義務の不履行(議員会館の部屋に鍵をかけていなかったこと、当該不審者について通報しなかったこと、住居侵入罪で告訴しなかったこと等について、国家公務員法上の職務専念義務違反違反と認定)に関し処分要求する必要があると考えるのである。



我が国のカウンターインテリジェンス強化に関する質問主意書
https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/216/meisai/m216041.htm

参議院議員神谷宗幣君提出我が国のカウンターインテリジェンス強化に関する質問に対する答弁書
https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/216/touh/t216041.htm

衆議院議員鈴木宗男君提出外務省のインテリジェンスに対する認識に関する質問に対する答弁書
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b164203.htm

衆議院議員鈴木宗男君提出外務省のインテリジェンスに対する認識に関する質問に対する答弁書
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b164203.htm


国際的に保護される者(外交官を含む。)に対する犯罪の防止及び処罰に関する条約
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/pdfs/B-S62-0201.pdf

義務違反防止ハンドブック
https://www.jinji.go.jp/content/900018083.pdf

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